ぴのした

ゴッドファーザーのぴのしたのレビュー・感想・評価

ゴッドファーザー(1972年製作の映画)
3.2
映画史に残る名作。とは聞いたものの、自分にはそれほど響かなかった…。

ドン・コルレオーネ、通称「ゴッドファーザー」率いるマフィア、コルレオーネファミリーの物語。あるとき、他のファミリーとの抗争でゴッドファーザーが襲われ、重体に。抗争が続く中、隠居中だったゴッドファーザーの末息子マイケルが次なるゴッドファーザーとしてファミリーをまとめていくことになるのだが…。

初代ゴッドファーザーを演じるマーロンブランドの渋さ、インテリ男からゴッドファーザーらしい威厳を備えていくようになるマイケルを演じるアルパチーノ。この2人の名優の演技がとにかく渋くてカッコいい。これが名画と言われる所以なんだろうね。

でも他の人が言っているような3時間ずっと緊張感があるっていうのはあまり感じなかったなー。出てくる人が多すぎて人物関係を整理できなかったし、特に最初は展開もゆったりしてて見ていて正直眠かった。(実際最初に見たときは開始30分で眠すぎて一回見るの諦めて寝た笑)

でも眠くないときにちゃんと人物も整理してもう一回見たらこの渋い感じがなかなか良かった。アクションシーンも煽りすぎず客観的すぎず、クールな印象。山場らしい山場は少ないんだけどね。

テーマとしては、これは「権力=父権」に縛られる人々の物語なのかな。初代ゴッドファーザーのマーロンブランドも、時期ゴッドファーザーのアルパチーノも確かにカッコいい。クールで人殺しもいとわないけど、ファミリー想いで、信頼関係を何より大事にしてて。でもこんなカッコいいゴッドファーザーは、実は権力という責任に縛られた、操り人形なのかもしれない。タイトルロゴの操り糸を見てそう思った。

思えば、そんなカッコよかった初代ゴッドファーザーも、最期は誰からも忘れ去られたように家庭菜園の中で倒れて死んでしまう。まるで糸が切れて捨てられた操り人形のように。しかもこれが父権とは対照的な存在である、極めて女性的、家庭的な「家庭菜園」の中の死というのも印象的である。

そして時期ゴッドファーザーになるマイケルもそんな「父権の呪い」から逃れられない。彼は最初インテリ気取りでファミリーからは一線を置き、彼女と楽しく暮らしていたわけだけど、ソニーの死以降、自分がファミリーの中心になっていく。ここでマイケルが彼女にいうセリフがすごく印象的だった。「父には権力がある。権力には責任が伴う」みたいな。結局この映画の本質はこの言葉に尽きると思った。

そして結果、権力を得たマイケルはファミリーの抗争に力で終止符を打ち、時期「ドンコルレオーネ」として認められる存在(ゴッドファーザー)になる。しかし一方、妻との距離は遠くなり、以前の人間味あふれるマイケルは、ファミリーのために殺しもいとわず、何事にも動じないファミリーのための「ゴッドファーザー」になった。それが最も強調されるのが(わざわざいうほどでもないだろうけど)あのラストシーンなんだろうね。

父権権力による強さと、権力に伴う責任に縛られる虚しさ。この映画のカッコよくて少し物悲しい雰囲気の正体は、そんなテーマにあるのかもしれない。あくまで個人的感想なので的外れだったらごめん。