ぴのした

白鳥のぴのしたのレビュー・感想・評価

白鳥(2023年製作の映画)
3.7
展開はドキドキして楽しいのに、着地点はかなりビター。ロアルドダール印のダークチョコレートのような一作。

映像で物語を見せるということを意図的にやめ、あくまで朗読劇に徹する面白い作り。キャラクターは出てくるものの、その「挿絵」的な役割しか与えられない。まるで劇のセットのように、草からドアを開けて出ては消える人。口頭で口真似する銃声。

映像と小説のもっとも大きな違いは、一度脳内で絵を描いてイメージする必要があるかないかだろう。

小説は読み手の想像力がないと楽しめないが、逆に一度物語の入り込んでしまえば、映像よりも豊かな物語世界を楽しめる。一方、映像はわざわざ読み手が想像する努力をしなくても物語を受動的に受け取ることができる。

ウェスアンダーソンがこの短編集を含め最近やろうとしているのは、その両者の壁を取っ払い、小説的な物語世界への没入感を映像の世界で再現しようとする試みのように思える。