おけい

ロッキーのおけいのレビュー・感想・評価

ロッキー(1976年製作の映画)
5.0
死ぬまでに観たい映画1001本 610番

すっかり若かりし頃のスタローンに心奪われ一人スタローン祭りをやってます。スタローンをスターにのし上げた『ロッキー』再鑑賞。

ロッキーは勝利や栄光が欲しかったわけではない。ただ証明が欲しかったんだ。

『もし最終ラウンドが終わってゴングが鳴っても、俺がリングの上に立っていたら、俺は人生で初めてそのへんのゴロツキじゃないってことを証明できるんだ。』

このロッキーのセリフのように、本作はロッキーバルボアという3流ボクサーが自分に打ち勝ち愛を証明する物語である。同じく俳優として売れない時代が続きオーデションに50回も落ちたという無名のスタローンが自ら脚本を書き上げ自分を売り込んだ渾身の作品でもある。この背景を知ると本作で一躍スターにのし上がったスタローンと主人公ロッキーとのシンクロに非常に胸が熱くなり更に傑作度が増す気がする。

三角社会の底辺を生きているロッキー。この映画ではロッキーバルボアという人物を前半とても丁寧に描いている。優しく懐が大きく潔いロッキーの性格を伺い知るシーンが至る所に散りばめられているのだ。トレーナーをやらせてくれと言ってきたミッキーとのやり取りや、内気なエイドリアンへの接し方を見ると、ロッキーバルボアという人物に惚れずにはいられないのである。静かな眼差しに低くて舌ったらずな喋り方も非常に魅力的なロッキー。

エイドリアンとのファーストキスは歴史に残る名シーンであり、映画史上最も大好きなラブシーンであると言っても過言ではない。スタローン自身もこのラブシーンが生涯で一番素晴らしいラブシーンだったと言ってるくらいだ。

タリアシャイアの戸惑う演技が絶妙で、ロッキーの部屋に入るかどうかためらうあたりから、キスするシーンまでが本当大好き。胸キュンしたい女子は絶対見るべき。

地味で伏し目がちなエイドリアンに『メガネを取りなよ』って言いながらメガネを取る。『綺麗な目だ』と言うロッキーに初めて目を真っ直ぐ合わせるエイドリアン。次に帽子を脱がせる。『美人だよ、お前』本当に見違えるように綺麗でハッとする。お見事としか言いようがない。

極めつけは『キスしていいか』 と言う不器用なロッキー。『イヤならじっとしてな』『俺はする』マジで鼻血出してぶっ倒れそうになったわよ。漫画かよと思うほど。何と無駄のない素敵なシーンなのだろう…

ロッキーは一歩ずつ近寄り、エイドリアンは一歩ずつ離れて行く、キスシーンに入る前のこの描写も最高で筋肉ムキムキの30近くの男が書いた脚本とは到底思えない…

そして、あの生卵。卵を5個割る眠気まなこのロッキーが可愛い。まつ毛ふさふさ。あの高揚感マックスのテーマ曲にのせたトレーニングシーン、ボコボコにされてもはや原形をとどめていない顔でのタイトルマッチのシーン、名シーンがたくさんあり過ぎてお伝えし切れない。

超低予算だったこの映画は数々の逸話が残っている。観客役のエキストラが急募でほとんど素人だったため(興奮した観客がロッキーを担ぎ出す)という予定通りのラストシーンが撮影できなくなってしまったり、メイク代を節約するために負傷したロッキーの特殊メイクを少しずつはがしていくことで最終ラウンドから第一ラウンドへと逆方向に撮影するという荒業だったという。低予算だからこそ何が起こるか分からない。偶然か必然か、時としてこのように名作は生まれる。だから低予算映画は大好きだ。

追記

最近、特別編のスタローン自身による解説を観て更に感動しきりで。あのロッキーの声はもう出せないって。あそこに居たのは紛れもなく、スタローンではなくロッキーだったんだってスタローンが言ってた。

監督が無名の俳優はいいと、しみじみと言ってたのも印象的。その作品にぶつける情熱が違うんだろう。

また何度も観ようと思う作品だ。
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