こたつむり

スタアのこたつむりのレビュー・感想・評価

スタア(1986年製作の映画)
3.7
♪ 踊る阿呆に 見る阿呆
  同じ阿呆なら 踊らにゃ 損々

コメディで売れるために必要なもの。
それは“感動要素”じゃないでしょうか。
笑っているだけでは“不安”になるので、払拭してくれる何かが必要なのです。 

恋の成就とか、主人公の成長とか、父と子の和解とか。頬を伝う涙が洗い流す悪感情。残るは綺麗なジャイアンの如く、真っ白な心。あー、面白かった。そう。それがコメディに求められているのです。

ゆえに、本作はマイナーなのでしょうね。
筒井康隆流ブラックユーモアの頂点とも言えるべく、笑って笑って笑い倒すだけの作品ですからね。中には倫理に反するギャグも含まれていて「ややや、これは笑っても良いのか」なんて不安になるのは間違いなし。

いやぁ。それが良いんですけどねえ。
これで不安を払拭するために感動要素を取り入れたら、それこそ欺瞞。それこそペテン。小手先だけで量産される粗悪品に成り下がってしまうのです。

それに、出演者の顔ぶれをご覧なさい。
峰岸徹さんや原田大二郎さん、水沢アキさん、和田アキ子さん。錚々たるメンバーがぞろりと集まって。あ。中には若かりし頃の北村総一朗さんまで。

勿論、原作者もノリノリで登場していました。
朋友の山下洋輔さんや、小説で挿絵を担当された山藤章二さんの名前もあります。そして、登場場面は少ないのですが、強烈な印象を残すのがタモリさん。お昼の番組とは違う雰囲気が新鮮です(こちらが本来の姿なのですが)。

そんな彼らが出演しているから大丈夫。
感動要素なんて無くても大丈夫。目ん玉ぐるぐる、ぱっぱっぱ。おサルの篭屋は、ほいさっさ。

あと、80年代半ばの作品なのに。
未だに都会的な雰囲気を保っているのも見事です。あの問題作『俗物図鑑』を仕上げた監督さんの作品とは思えません。たった4年の違いで、こんなに変わるものなのですね。

まあ、そんなわけで。
ブラックユーモア満載の密室劇。
但し、三谷幸喜監督のような優しい手触りではありませんから、原作未読の場合は注意が必要です。喩えるならば、化学調味料だらけの駄菓子。放送禁止用語程度で神経過敏になる向きにはオススメできません。

キ×ガイ×チガイキチガ×、うけけけけ。
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