ひさかた

アカルイミライのひさかたのレビュー・感想・評価

アカルイミライ(2002年製作の映画)
5.0
嫌な夢を見ることがある。
たまに、夢を見る。それが夢ではなく、未来の出来事であるということはとっくに知っていた。すごく不快だ、ということだけ理解している。
守さんと俺はおしぼり工場で働いている。ふたりで働いて、仕事の後になんとなく守さんの家でだべって帰る。守さんの家に居るクラゲを見る。ご飯を食べる。音楽を聴く。それの繰り返し。そしてたまに夢を見る。
俺は、自分で自分が分からない。何かがすごく嫌になる時もある。そういう時、守さんが助けてくれることがよくあった。今は「行け」の時だ、今は「待て」だ、という風に俺に教えてくれる。それで何とか、何だか居心地の悪い東京にいられる。

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すごく映画的な映画です。
わたしが辞書の「映画」という項目を書くのであれば、間違いなく「アカルイミライ」だと書きます。

我々が生きているこの地はひどく曖昧で、理由のないことに満ち溢れています。何をしたから必ず評価されるわけではないし、自分が今ここに立っていることに明確な理由を持つ人はそういないでしょう。
人間だって恐ろしく多義的で、いろいろな顔を持っている。きっと状況によって選択も変わるでしょう。
歳を重ねるごとに同一人物でも新しいものが追加されたり何かが無くなったりします。

それでも、それらは必ずしも卑下すべきものではない、という明るさを包括しているのがこの作品です。

曖昧だけど、それが愛おしい。
そんな作品でした。

きっと、これからも幾度となくこの映画を観て、また違う感想に思いを寄せるのでしょう。それを赦してくれるのが、この作品なのだから。人間であり映画なのだから。
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