ひさかた

アメリカン・ビューティーのひさかたのレビュー・感想・評価

アメリカン・ビューティー(1999年製作の映画)
4.7
その真紅が映すは本能か、愛か。

------------------------------

「アメリカの理想的な家族」。そう見えるようにみんな必死だった。
赤い扉が華やかなマイホーム、安定した職場。不動産業を営む妻にスクールカースト上位の娘、庭に咲くアメリカン・ビューティー。
きれいに言えばそうだけど、その実完璧とは程遠い生活だった。
長年の住宅ローン、いつ切られるか分からない職業、妻とはベッドが同じだけで何も無く、娘は私を嫌悪している。
生活の中で、何かを押し殺しているような感覚だったのだ。そんな何かが、ある少女を見ることで開放された。
この映画は、そんな私の走馬灯だ。

------------------------------

ケヴィン・スペイシーの怪演が光る名作です。気持ち悪い父親を具現化した彼が冒頭で死ぬことを明言し、彼が死ぬまでに何があったのかという走馬灯を共に見るような作品。
娘の同級生に発情するとか振り切ってからの高圧な態度が最悪ですが、彼の行動は正直ちょっとうらやましいなと思う自分もいたり。あれだけ振り切って上手く回りだしたら、そりゃ人生最高!になりますわ。

彼は最期にすべてを得るのです。最期の日、あの美しさのためにこの映画があったのだと思わせてくれる演技と演出。望んでいたものをすべて得たからこその、最期の語り。いつか自分もそう思える日が来るのでしょうか。
ひさかた

ひさかた