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憂愁平野のsayuriasamaのレビュー・感想・評価

憂愁平野(1963年製作の映画)
3.8
骨組みは豪華絢爛で文句なし!なのに色々惜しいところが多くてもったいない作品?


ストーリーは
社長夫人で何一つ不自由ない亜紀(山本富士子)はある時、軽井沢へゴルフへ出かけた夫・賢行(森繁久彌)が浮気をしているのではないかとふと思いついてしまう。そんな中、賢行は軽井沢で、亡くなった友人の妹である美沙子(新珠三千代)と再会する。美沙子は、賢行のことを兄の友人であることや、有能な男性で有ることなどから、惹かれていく。
美沙子は東京のホテルで賢行を訪ねたときに、亜紀と出会う。亜紀は本能的に美沙子を警戒する。
さらに、亜紀は美沙子の親類である、彫刻家の魚次郎(仲代達矢)と知り合う。夫と全く違う雰囲気をまとう魚次郎に、亜紀もまた惹かれていく。さてこの4人の行く末はいかに?

キャストも豪華。着物姿が常にパーフェクトで帯の柄も麗しき山本富士子さまに、洋装で儚げ、だけど中身はかなりの狂気も含む新珠三千代さまも美しく咲き誇る。怪しげな芸術家の仲代達矢の迫力に、ザ・亭主関白社長の森繁久彌も悪くない。
けど、なんというか群像劇の織りなす立体感のような雰囲気が少なくてやや単調に見えてしまってまして…
ストーリー内では、この4人が総当たり戦のように、演技合戦をするのですが、それぞれのバトルを見守る感じになってしまい、ストーリーとしての面白さや広がりが減ってしまったように思います。単発的には、
山本富士子vs新珠三千代の女の戦いは緊張感あって見応えあったし、
山本富士子&森繁の犬も食わぬ夫婦喧嘩←傍から聞いてる分には面白い&最終的に家の柱をギコギコ切ろうとする森繁が可笑しいw
や、日比谷野外音楽堂のベンチで若いアベックに負けじとライトいちゃいちゃ〜したりと中年の危機な夫婦はあるあるネタのように面白かったんですがね…

仲代達矢&山本富士子のシーンは意外性が少なかったことと、新珠三千代&森繁久彌のシーンは妙にロマンチックで、(モリシゲさん、すまん)特にクライマックスの霧のシーンでは、(内心この部分だけは二枚目にお願いしたい)と思ってしまった…

ロケ地は東宝創業地・日比谷エリアを中心に、軽井沢のゴルフ場も豪華。(セットだとしても)舞台がホテルで豪華絢爛ではあったのに、なんとなーくテレビの2時間ドラマ感がところどころに感じてしまいもったいない雰囲気が…

豊田四郎監督✕山本富士子✕森繁の組み合わせの前作『如何なる星の下に』の方が、映画としての出来はいいけど、やっぱり築地より日比谷の方がより周年記念映画っぽいよね…

あと、時代的に、女性が一人で運転して軽井沢に行くとしたら、天才的なドライブテクがなければ難所、碓氷峠を越えられないのでは?とか、美沙子は恵那(岐阜県)出身ならば、お嬢様とはいえ、もう少し名古屋アクセントになまってるのでは?とどっちでもいいことが気になってしまったこともあった。

ストーリーと関係なく、「またお目にかかりましょう」と仲代達矢とお富士さまがラストに握手する別れ、五社協定の行く末のようでなんとも切ない。

しかしながら、豪華キャストの演技(特に新珠三千代の狂気じみた完璧なる愛情)は水準には楽しめる作品ではあります。

ちなみに、ワンシーンにしかいなかった、お寺のお庫裏さん(住職の妻)役の乙羽信子のキャラがナイスでした。
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