こたつむり

ビー・デビルのこたつむりのレビュー・感想・評価

ビー・デビル(2010年製作の映画)
3.9
♪ 島唄よ 風に乗り鳥とともに海を渡れ
  島唄よ 風に乗り届けておくれ私の涙

「ビートゥギャザー、ビートゥギャザー」
と唄いたくなる快作ではなく。
悪魔になれ、と。
やれ、やったらいいよ、と。
耳元で囁かれる物語でした。

それは、まさに恐怖。
オレは人間をやめたぞと宣言するまでもなく。
向こう側に“逝く”のは簡単である、と。
振り切れるのは一瞬である、と。
理屈ではなく感覚で解りますからね。

勿論、僕も拳を握りしめましたよ。
あの瞬間、太陽がいっぱいになったときに「イエス」と言いました。そして、僕の心のひび割れからゾロリと現れたのは悪魔。生臭い息を吐きながらニヤリと嗤っていたのです。うひぃ。

さすがは韓国。
“恨”の国と言われるのも納得ですね。
こうも簡単に負の感情を想起させることが出来るなんて驚きです。

確かに舞台は限界集落も真っ青な孤島。
自分たちの常識を当て嵌めるのは間違いだと思います(郷に入っては郷に従え、は先人の貴重な知恵)。

しかし。しかしですよ。
だからと言って、あの状況をサラリと見せることに躊躇がないのは「文化の違い」だけで済ませられないと思うのです。立膝でご飯を食べる…そんなレベルとは違いますからね。

しかも、恐ろしいのは本作を“感動作”のように捉えていること。いやいやいやいや。顔を血で染めた後で“爽やかな笑顔”を見せられても笑えないわけで。ましてや「切ないのう」なんて思えないのです。

それに観客の捉え方によって主人公が変わるのも微妙に嫌な話。都会から帰ってきたヘウォンなのか。島から出たことがないボンナムなのか。それによって本作の評価も変わると思います。

まあ、そんなわけで。
「18歳未満お断り」と言われるのは刺激的な映像が原因ではなく、本作の手触りが生々しいから。それを理解したうえで臨むことをオススメします。「胸糞になる映画は最低」と思う方は絶対立入禁止ですよ。
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