ブタブタ

戦争のはらわたのブタブタのレビュー・感想・評価

戦争のはらわた(1977年製作の映画)
5.0
原題は『鉄十字勲章』ですが邦題『戦争のはらわた』は『死霊のはらわた』に並ぶ傑作邦題、付けた方を尊敬します。

ロボットアニメに例えるならコレはガンダムやマジンガーZではなく、正にゲッターロボ(石川賢・画の原作版)の世界。

残酷で情け容赦なく血みどろ臓物が撒き散らされるかの如き地獄絵図なのに、同時に血湧き肉躍るアクション・エンターテインメント巨編。

スタイナー軍曹(ジェームズ・コバーン)のカッコよさと無敵さと狂気。

敗色濃厚な独ソ戦末期を舞台に戦争の悲惨さやリアル、反戦や平和を訴えると言うより伝説的戦士スタイナーの地獄巡り・冥府魔道のバトルファンタジーとして見た方が少なくとも自分は楽しめました。

スタイナー軍曹がいくら撃っても撃っても熱でジャムる事は無いMG42機関銃やMP40自動小銃は、座頭市のいくら斬っても斬っても切れ味が落ちない仕込み刀と同じくマジカル武器(笑)ですし、無機質でキュルキュルいいながら何処までも何処までもやって来るT-34戦車の恐怖はターミネーターの暗黒の未来世界に於ける無人自動化兵器HK(ハンターキラー)を思わせます。

スタイナー軍曹は何の為に戦うのか?
国家や愛する者を守る為、も勿論あるでしょうがナチスとヒトラーを徹底的に軽蔑し組織や上官に対しても糞喰らえ!と言う態度、飽く迄も己の信念と生死を共にする部下の事を何より重んじる男。
厳格な軍人であると同時に孤高のアンチヒーロー。
またスタイナー軍曹と敵対する上官、プロイセン貴族(鉄十字勲章はナチス政権のはるか前、プロイセン王国時代からある名誉ある勲章だそうです)出身のシュトランスキー大尉のただひたすら勲章が欲しい俗物具合とその為なら仲間すら犠牲にする、名誉と権力欲に取り憑かれたクズぶりはスタイナー軍曹とは対極に位置し余りにも下衆過ぎて悪役として魅力すら感じます。

サム・ペキンパー一流の「破滅の美学」
勝利なき闘い、描かれるのは敵中突破の絶望的な敗走戦。
ソ連軍だけでなく味方の筈のドイツ軍迄敵に回して戦いの果ての仁王立ち、スタイナー軍曹の「ワ―ッハッハッハ!!」の高笑い。
まさに地獄の羅刹が如く。

アレハンドロ・ホドロフスキー監督が『エル・トポ』撮影中、近くでペキンパー監督が『ワイルド・パンチ』を撮影していてセット等を借りたそうですが、「銃口から直接血が噴き出す様な西部劇を撮りたい」
と語っていて、ホドロフスキー監督はセットを借りただけでなく、その残酷アクションや救いようの無い世界観もペキンパー監督から影響を受けているのかも?と思ったので、もしホドロフスキー監督が戦争映画を撮ったら『戦争のはらわた』に匹敵する地獄絵図冥府魔道戦争映画が出来ていたかもと想像してしまいます。
ブタブタ

ブタブタ