RYUYA

戦争のはらわたのRYUYAのレビュー・感想・評価

戦争のはらわた(1977年製作の映画)
4.5
適当に借りたDVDに同じ俳優が出ていた時って、なんかいいっすよね。
これの前に観た『夕陽のギャングたち』にもジェームズ・コバーンが出てて、しかもレオーネとペキンパーは同世代、共に西部劇から始まり一時代を作った男で、『はじめの一歩』で言えば宮田と一歩のような関係性を勝手に想像してアツくなるのだが、とにかく両者ともに全作傑作。そして何よりカッコいい。

『戦争のはらわた』は噂にたがわぬ大傑作だった。
対ソビエト軍、第二次世界大戦をドイツ軍側の視点で描くという、世界中どこを探しても感情移入してくれる人が見つからないような鬼みたいな設定なのだが、軸として描かれる二人の登場人物の対比がまぁ実に本質的で、こんなこと言ったら“戦争に失礼”だけど、タイトル『人間のはらわた』でも良かったんじゃないかというくらい。
ジェームズ・コバーン演じる小隊長は、まるで取り憑かれたように戦場慣れしていて仲間想いだが、昇進や勲章などには全く興味のない男だが、マクシミリアン・シェル演じる大尉は勲章を欲しがるクセに椅子に座って指示出しと報告しかせず一切戦場に赴かないチキン野郎。
言ってみれば、現場と会議室。会社やバイト先、下手すりゃ家族間でもありうるこの理不尽な関係性が、二時間超にわたる爆撃爆発の轟音の果てに逆転し、とんでもないフィナーレを迎える。室井さんはいい奴だが、あのジェルで固めたオールバックをグシャッと掴んで事件現場の所轄のたまりに放り込んだら死ぬ程気持ちいだろうなぁと思う時があるが、本作ではそれが観れる。他の戦争映画は戦争を繰り返さない事を訴えるが、この映画はそれらと明確に違う。あのラストでペキンパーが「これが戦争だ!」と喉を枯らすように吠え、「戦争は終らない」と悲しそうに呟いているのが聞こえた。
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