こたつむり

ロボジーのこたつむりのレビュー・感想・評価

ロボジー(2011年製作の映画)
3.6
★ 二足型ロボットの有益性と問題点(或いは大衆娯楽の蓋然性)

「コメディはゲラゲラと笑えれば良い」
…確かにそのとおりだと思います。ジャンクフードに栄養バランスを求めるのはナンセンスな話ですからね。しかし、健康志向が叫ばれる昨今、全方向に気遣ったものが売れるのも事実。だから、コメディにも“テーマ”を付加するのは当然の選択肢なのです。

勿論、それは“さり気なく”が前提。
大仰なテーマを掲げても面白くなければ意味がありませんからね。それに面白さとテーマを両立させる…言葉では容易くても実現は難しい話。高度なバランス感覚が必要なのです。矢口史靖監督は、その期待に応えることが出来る稀有な御方…だと思っていました。

しかし、本作に限って言えば物足りなかったです。いや、コメディとしては面白いのですよ。相性もあると思いますが、序盤から爆笑の嵐。そもそも、ロボットを作ることが出来ないから中に人を入れてしまえ、という発想からして面白いのです。

特に吉高由里子さんの存在がポイント。
屈託ない笑顔のロボットマニアが繰り広げる“勘違い”にニヤニヤしてしまうのです。いやぁ。彼女は本当に稀有な女優さんですね。無垢と狂気を兼ね備えていますからね。

また、濱田岳さんが前面に出過ぎていないのも良かったです。主演もこなせる彼が脇に回ると物語が厚くなるのですね。これは矢口史靖監督の配役が見事に決まった好例だと思います。

ただ、そんな素晴らしい配役も。
鑑賞後には物足りなく感じる要因のひとつになりました。何しろ、取り扱っている題材を深く掘り下げていないので、物語が配役に負けてしまったいるのです。

老後の過ごし方とか。家族の絆とか。
ロボット工学に夢を見て頑張る姿とか。
そんな題材を扱いながらも、それを消費するだけ。コメディとしては当然でも、矢口監督ならばその先を見せてくれる…そう期待してしまったのです。

まあ、そんなわけで。
力み過ぎずに「たららん」と楽しむ作品でした。終盤の展開に肩が下がる部分もありますが、それもコメディとして考えれば問題なし。また、周囲を“欺く系”の作品ですが、胃がキリキリと痛むこともないのでサクッと楽しめます。
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