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鴛鴦歌合戦のBaadのレビュー・感想・評価

鴛鴦歌合戦(1939年製作の映画)
5.0
2008年の京都映画祭のマキノ映画特集の関連で市内の名画座で上映されたものを見ました。

モノクロ、60分強の作品ですが、そうしたハンデをものともしない楽しく充実した内容。いわゆる歌いっぱなしに近いオペレッタ映画なのですが、昨今のその種の映画にありがちな単調さを感じさせないテンポの良さが魅力です。

片岡千恵蔵扮する一人の浪人を巡る3人の可愛らしい美女の恋の成り行きにどちらも骨董好きの、バカ殿様と美女の一人の父親である浪人が絡んで繰り広げる人情喜劇。

殿様に扮するディック・ミネとお気楽な家臣団がおかしい。父親役の志村喬も歌声を披露しますが、なんとも味があっていい感じです。可愛らしいけどしっかり、きっぱりしている小柄な若い女性達に振り回される男達の有様がおかしい。(千恵蔵演じる浪人は違うようですが)乱闘場面での大八車の使い方が意表をついていて楽しかった。

早撮り、低予算映画らしいですが、美術の趣味の良さは際立っています。空き地にずらりと並んだ絵日傘の柄、知恵蔵や娘達の着る着物の柄や柄合わせ、着こなしの粋であること。役者さんの多くは、ほぼ着たきり雀ですが、白黒映画というハンデを見事に克服した柄の使い方が素晴らしい。

雰囲気的には山中貞雄の『丹下左膳余話 百萬両の壷』と似た明るさと趣味の良さがありますが、この映画の方がいくらかベタでお約束通りでしょうか。こういう可愛らしい作風、失われて久しい様にも思いますが、ぜひ今の日本映画にも受け継いで欲しいところです。

(和製オペレッタ 2008/11/3記)
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