たく

ル・ミリオンのたくのレビュー・感想・評価

ル・ミリオン(1931年製作の映画)
3.7
借金漬けの芸術家が行方不明となった宝くじの当たり券を追って奔走するドタバタコメディ。「巴里の屋根の下」(未見)に続くルネ・クレール監督のトーキー2作目とのことで、サイレント演出とミュージカル調が多用されるのは本作の後に撮られた「自由を我等に」も同じだったね。

パリのアパートに住む画商のミシェルが婚約者のベアトリスに画のモデルとの浮気現場を発見される冒頭から、ミシェルが借金漬けでしょうもない男だと印象付ける。彼が借金を踏み倒す気満々で開き直ってるのがちょっとイライラしたところに、友人が宝くじの当選を告げに来たとたんにミシェルに金を貸してた人たちの態度が豹変するのが滑稽。ここで泥棒のチューリップおやじがアパートに闖入してくるのが唐突で、ベアトリスが当たり券が入ってると知らずに上着を彼にあげちゃうところから、ミシェルたちが当たり券を追って奔走するドタバタ展開になる。

チューリップおやじがオペラ歌手に上着を売っちゃたり、ミシェルがチューリップおやじと間違われて逮捕されたりとまあ忙しい。終盤でオペラ歌手の歌が舞台裏に隠れるミシェルとベアトリスの恋の語らいとシンクロするところとか、皆が上着を奪い合うのをラグビーの試合に見立てる演出が抜群に冴えてた。ラストが冒頭につながる大団円の手際も見事だった。貧乏人が大金を手にして浮かれる話は「7月のクリスマス」を思い起こさせる。
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