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女囚さそり 701号怨み節のblacknessfallのレビュー・感想・評価

女囚さそり 701号怨み節(1973年製作の映画)
3.8
梶芽衣子さんが回想録でさそりシリーズはこれが一番気に入ってるて言ってたんで、10年以上ぶりに再見。

よく言われてることだけど、この作品だけテイスト違いすぎる。前作まで濃厚だったドロみとエグみが薄くてさそりじゃない的な評価あるけど、確かに大雑把に言えばそうだし納得できる気もするけど、さそりらしくないとは思わない。

このシリーズは主に権力持った男に利用されたさそりの抵抗、復讐の軌跡を画く。それによって男性優位主義の虚飾を剥がしそこから現行の国体の欺瞞をも顕にする。てのが通低してて、それは見事に今作も継承されてる。
なのでおれはさそりっぽくないとは感じなかった。

ただ、さそりなんだけど東映っぽさが希薄なんだよな笑
さそりを追う冷酷無比な刑事に細川俊之、さそりの逃亡を助けて心を通わせる元学生運動革命戦士の田村正和。
この二人の男臭さや蒸せかえるような男汁がほとばしる東映特有な暑苦しさや下世話さと無縁なノーブルでスタイリッシュな佇まいは東映感0だよ笑
監督も日活の野良猫ロックシリーズの長谷部安春だし、画面も端整でモダンなんだよね。
田村正和と梶芽衣子さんだけのシーンなんて二人とも日本人離れした超絶美形なんでヨーロッパ映画みたいな風情が出まくり!パパはニュースキャスターから入ったおれは正和の韜晦系で退廃の魅力を放つ演技に毎回目が眩みそうになる。おまえそんなニヒルでかっけーのもできたのかよ!てなる笑
それと細川俊之もいい。魅惑的な低音ボイスから上品な口調で残酷なことを語り、品を失わず狂気を暴走させる。質はちがうけどレオンのゲイリー・オールドマンがやった悪徳刑事を思わせる。これも無論かっこいい。
そして何より梶芽衣子さん。続編を拒んでいたのを長谷部安春監督ならということで演じただけあって、視線の送り方、眉根を寄せるしぐさ、細かい演技全てがシリーズ中屈指の美しさ!さそりとしてってより美しい女性としての冴えが他とは全然違うんだよ💕
監督との信頼関係の強さの結果かな?

これらの要素が因果の濃いさそりシリーズの世界観とクラッシュしてさそりとしてのアイデンティティーを保ちながらもシリーズの中で異彩を放つ快作に。

でも、やっぱりさそりは女囚701号と第41雑居房のが好きかなこれより笑
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