こたつむり

復讐者に憐れみをのこたつむりのレビュー・感想・評価

復讐者に憐れみを(2002年製作の映画)
3.9
♪ 傷つきやすいくせに 傷つけ合ってばかり
  愚かな生き物さ 人間は

復讐三部作のうちの一本。
というか復讐を題材に3本も作るところに“執念”を感じますね。さすが韓国。熾烈で苛烈で激辛なお国柄は相変わらずです。

仕上げたのはパク・チャヌク監督。
あの『オールド・ボーイ』を手掛けた御方です。というか本作の方が先なので、どちらかと言えば本作あっての『オールド・ボーイ』。なるほど。蛇のような筆致は地だったんですね。

それゆえにエグさ100%。
露悪的な表現は少ない…というか、哲学的な表現が多いのに“こめかみに伝わる痛み”は鋭いのです。まるで針で神経を突かれたかのようで…ぐえ。

特に手すりのない階段を昇る場面は印象的。
闇社会へのアクセスを“地下に降りていく”という概念で表現するのではなく、不安定な状況で昇っていく状況に喩えたところが秀逸だと思います。

また、物語の構成も独特でシャープ。
主人公はソン・ガンホが演じる社長なのですが、最初は目立たせないように距離を置き、次第に近付いていくので、気付けば物語がひっくり返っているのです。

それゆえに“復讐”の意味も二転三転。
ギャグ要員のようなペ・ドゥナの素っ頓狂な発言も聞き逃せません。このバランス感覚は斬新ですね。見事です。

あ、ちなみにペ・ドゥナと言えば。
ムフフでグフフな場面もありました。
あまり生々しくないので「監督の趣味で入れたな」と思うほどに浮いていましたが、その辺りは口を噤むが吉。素直にご相伴に預かれば良いと思います。御馳走様でした。

まあ、そんなわけで。
韓国特有の“恨”を煮詰めたような物語。
復讐という非生産的な行為の先に転がるのは誰の骸か。

「全力を尽くして負けたなら仕方がない」
そんなことを言えるのは恵まれた環境だからなのでしょう。いつだって世界は無常。せつないですなあ。
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