イホウジン

風と共に去りぬのイホウジンのレビュー・感想・評価

風と共に去りぬ(1939年製作の映画)
4.0
満足度は申し分ないのだが、それ以上の感動に乏しい気がした。

前知識ほぼゼロで観たため、色々驚いた点が多々あった。南北戦争が前半でほぼ終わってしまう点は特に意外だった。
前半では、南部の富裕層の家庭が南北戦争により日常が崩壊していく様を描いている。これは全編に言えることだが、どうも主人公のキャラクターが好かない。確かに自立した図太い女性という解釈もできなくは無いが、それ以上に、過剰なまでの男性コンプレックスを抱くあまり周囲の犠牲をも厭わない人心掌握術を手に入れてしまったこじらせ女子、というイメージの方が強かった。
ストーリーは悪くないと思う。群衆を描く中でも常にメインとなる登場人物がハッキリとしていて、とても洗練された内容であった。
後半では、戦後主人公が商売で「勝利」を収めるために奮闘する姿を描いている。全体に発生する出来事が多く、とてもテンポよく観れて楽しめた。前半での主人公の性格の悪さも大概だったが、後半では同じく(もしくは主人公以上に)性格のひん曲がった夫との掛け合いもあり、さらに酷い方向に向かっていく。
お互い下心満載で軽いノリで結婚したため、この夫婦のやり取りはまあ酷いものである。両者それまで人心掌握のことしか考えていなかったため、いざ結婚してパートナーとなると急に関係性に戸惑ってしまったのだろう。極めつけは夫のDVである。あれはダメだ。
終盤の展開は良くも悪くも驚いた。異常なまでにリズミカルで、イマイチ空気感が伝わらなかった。最後も物足りない。あそこからが面白くなる展開だったのでは?

この映画の最大の問題点は「悪い行い」を断罪せず、“しょうがないもの”程度の扱いしかしていない点だろう。確かに主人公の身の回りでは失恋や階級の没落,戦争,身近な人の死,などなど様々なアクシデントが発生するが、それは家政婦(黒人)への暴力や不倫、DVを容認する理由にはならないはずだ。

一見の価値ありというのは間違いない。90年近く前にあれだけのストーリーやカメラワークが成立している点は高く評価されるべきである。ただ、古い価値観に囚われている映画であるという認識は常に持っておく必要があるだろう。
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