イホウジン

インファナル・アフェアのイホウジンのレビュー・感想・評価

インファナル・アフェア(2002年製作の映画)
4.1
善は悪を上塗りできるか?

マフィアのスパイをする警察官と警察のスパイをするマフィアの組員という、正義と悪のバランスが常に揺らぎ続ける2人を中心に物語が進むため、少ない登場人物ながら意外と複雑なストーリーが展開される。主人公2人の心情の変化が繊細であるだけでなく、騙し合いなどのゲーム的な要素も存分に描かれるからだ。
これは短い映画ながら、それだけ表現すべきものを表現しているということだ。特に興味深いのは、映画でよくある正義が悪に染まっていくといったプロットに落ち着くことなく、あくまで2人とも「善」の心でいようとし、とりわけ警察のスパイであるマフィアの組員の方も(少々歪んではいるが)正義の道を歩んでいる点である。故に観ていると悪の所在が分からなくなるだけでなく、正義とは社会のどこにあるのかという問いも分からなくなってくる。無間地獄とは言い得て妙である。それがこの物語をやけに複雑にしている要素のひとつであろう。
スリラー映画としての面白さもしっかりと担保されている。アクションの面でもしっかり魅せてくるし、暴力が行使される場合には両者決して容赦ない。小刻みに次々と新しいイベントが発生するため、たとえ内容で置き去りにされても退屈に感じることはないだろう。
脚本もアクションも、2時間ない映画ながら見事である。
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