イホウジン

独立愚連隊のイホウジンのレビュー・感想・評価

独立愚連隊(1959年製作の映画)
3.8
コメディでも拭いきれない戦争の混沌

「日本で西部劇は可能か?」という問いに挑んだ映画であることはすぐに分かる。満州の荒涼とした大地を駆け抜ける馬、男たちの友情、明確な敵、血なまぐさい恋愛模様など、ハリウッドのそれで見たことがあるような諸要素を見事に“邦画”に落とし込んでいる。それでいて二番煎じ感は無く、あくまで独立愚連隊というひとつの映画として自律するものがあるのも見事だ。
それ故に構成上はポップなストーリーである。個性的なキャラクター達や軽快な音楽、分かりやすすぎるほどの伏線張りとその回収は、意図的に万人受けするように制作されているだろう。登場人物はそこそこ多いながら敵味方は明確で、鑑賞しやすい映画であるのは間違いないだろう。さすが西部劇ベースの物語である。
しかしながら今作は同時に戦争映画、それも日中戦争を題材とした映画である。なので、戦場の無惨な様子や人間の愚かさ、そして戦争そのものへの嫌悪感も、こちらもやはり明確に表現されている。終盤の展開はまさにその典型だろう。敵の思惑とその先に待ち受ける愚連隊の運命は、それまでの朗らかな雰囲気から一転、一気に「野火」のような殺伐とした空気になり、この映画が否が応でも戦争を扱っているということを知らされる。
なので物語が破綻しているとも言えるかもしれないが、しかしこの断裂があるからこそ、今作には唯一無二の余韻が鑑賞後に漂うのだろう。
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