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二十日鼠と人間のmomokaのレビュー・感想・評価

二十日鼠と人間(1992年製作の映画)
4.6
涙が止まらなくなった。
悲しみが鋭く胸を突き刺すように、苦しくなる。
どうすることもできない、やるせなさ。

1930年、大恐慌時代のカリフォルニアを舞台とした本作。出稼ぎ労働者のジョージとレニーはささやかながらも、自分たちが農場主となる夢を抱きながら、農場から農場へと渡りながら、厳しい生活を送っていた。そうした中で、新しい農場で二人はなんとか働くことになったのだが…。

頭が切れるジョージは、発達障害で子供と同程度の知能しか持ち合わせていないレニーが数々の問題を引き起こしながらも、いつも傍で寄り添い合ってきた。二人の友情は深く、レニーに振り回されながらも、他愛もないやり取りには笑みがこぼれるし、夢を語り合う姿もとても素敵だった。農場にはウサギ小屋を建てて、世話は絶対僕がするんだというレニー、それを笑いながら聞き入れるジョージ。過酷な労働の日々の中にも、二人の姿を見ると安心し、温かな気持ちになる。

だからこそ、このラストしかなかったんだと分かる。レニーのことを大切に思っているからこそ、他人にレニーの最期を委ねることなんて、ましてや苦しんで死にいく選択肢を選ぶことなんて、絶対にジョージにはできなかったのだと。しかし、この選択をした、ジョージの心は潰れてしまうんじゃないかと悲しくて、悲しくて、泣いてしまう。レニーを救い出してあげられなかった後悔が、ずっとジョージの心に鉛のようにのしかかり続けるのだろうか。

ただ、農場で長年働いている老人が相棒のように生活を共にしてきたかつて牧羊犬だった愛犬を臭いなど、病気でつらそうなどと、周囲の人間から言われて、大切な愛犬を撃ち殺すのを承諾してしまう場面があった。その老人が後々、自分で撃ち殺せば良かった、他人に任せたのは間違いだったと、ポツリと思いを吐露する。
きっと、ジョージの頭にはその時の老人の姿や言葉が焼き付いていたのだろうと思う。
だからこそ、レニー対してあの選択を下したのだと感じた。二人で描いていた農場主になるという夢。一緒に暮らし、幸せな生活を送る。ウサギ小屋を持って、冬には温かなストーブを部屋に置く。希望に満ちた夢は、儚く脆く散ってしまった。その現実が、ただただ心に染みる。

こんな素晴らしい名作を観ていなかったのかと思うと、映画の世界は本当に奥深いものだなと感じる。まだまだ出会えていない名作が沢山あるんだろうな。今日は映画を観ながら涙を流したいという日にはオススメの作品です。
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