すっごく分かり易く言えば、グザヴィエ・ドラン版「おかんとマー君」。「ダウンタウンのごっつええ感じ」でやっていた母と息子の口喧嘩を題材にしたコントを、映画的かつドランらしい個性的な描写で拡大した感じだ。母と息子の、愛し合っているから、距離が近いからこその衝突は、どうやらカナダでも同じらしい。
同じグザヴィエ・ドラン監督作品で、母と息子の関係を描いた「Mommy」ほどヒリヒリした感触は無く、特に前半は微笑ましささえ感じられる。ドラン自身にとって初監督作品で、主演も務めており、良い意味でのシンプルさと素朴さがある。
後半に入ると、喧嘩の様相もシリアスになってくるが、それでも母は手を上げないし、息子も物を壊したりしないのが良い。あくまでもやりとりのテンポを中心に据えた、上質な会話劇である。
ドラン作品の常連、スザンヌ・クレマンが主人公の担任を演じ、物語に厚みを加えている。