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マイ・マザーの655321のレビュー・感想・評価

マイ・マザー(2009年製作の映画)
3.3
息子という役割。母という役割。
与えられた役割に馴染めず反発する。
愛せないのに愛している。
縛っている縄を解こうと踠けば踠くほどその感触が手に残る。

きっとこの映画を観た誰しもが自身を重ね合わせて想いを巡らすだろう。
今まさに反発している人。
上手く役割を演じている人。
最早ノスタルジーとして置いてきた人。

私は「母の息子」である事に反感を覚えた事は無い。
勿論、母に不満を感じた事はあるけど。
「アレ、どこにあるか知ってる?」
「私は触ってないよ」
昔から母のこの返答が大嫌いだ。
一つは、質問と答えが噛み合っていない事。
一つは、往々にして母が片付けている事。
最後の一つは、それを知らない事なんかで母を嫌いになるわけなんて無いのに言い訳をする事。
愛せるのに愛さない。と私に思われる。
そんな心配をする母のもとで育った私は、
およそこの映画の家庭とは真逆なのだろう。

絵画のような構図は独特で面白い。
だが私は感性を持ち合わせていないのに美術館に来てしまったような気がする。
すごい。おもしろい。
それ以上の掻き毟られるような言葉が出てこない。
なんとも間が抜けた家庭で育ったなあと思うけど、きっと我が家は神だかブッダだかに「間が抜けた家庭」という役割を与えられたのだろう。
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