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二階の他人のbluetokyoのレビュー・感想・評価

二階の他人(1961年製作の映画)
1.9
山田洋次監督の初めての作品ということで、楽しみにしていた。が、それだけだ。山田洋次監督の初めての作品ということだけで、ほかは凡庸なだけである。いったい、この作品からどうやって、寅さんが出てくるのかさっぱりわからない。
もし、山田洋次監督ならでは、というシーンがあるとすれば、冒頭の駅の改札口のシーンである。雨に降られていて、主人公が、どうしようとなっているところ。臨場感がとてもあって、まさに、山田洋次監督である。だが、それだけである。
あと、ホームドラマみたいな内容のわりには、ロケシーンが多いぐらいかな。
最近、山田洋次監督は、新聞に昔のことを書いている。それによると、監督になるかならないかのとき、演劇のことを勉強していたそうだ。そのとき、スタニスラフスキーシステムという演技法を学んだらしい。臨場感のあるシーンと俳優のリアルな演技、ということか。残念ながら「二階の他人」には、その両方がない。とくに、俳優のリアルな演技はない。つまらない凡作になるのは当然だ。

簡単にあらすじ。
葉室正巳と明子夫妻は、無理して、新築の一軒家を購入する。無理して、というのは、あちこちに借金をして、ということらしい。

で、対策として、家は二階建てにして、二階部分を貸して家賃収入を得て、借金返済に回そうと考えた。
この方法は、いまでもあるよな。たとえば、マンションを購入して、その部屋を第三者に貸して家賃収入を得る。実は、なかなかうまくいかないんだよね。

ということで、最初の借主の夫婦。夫は失業中で、家賃を払う気はなし。正巳は仕事を紹介したりしたが、それでも、まったく、やる気なし。

といっているうちに、長男の家にいた母親がやって来る。この母親がすごく憎々しげだったりする。こういう場合は、ちょっとは憎めない部分もあるわけだが、この映画の場合、たんに憎々しいだけである。

家賃滞納夫婦に、最初は賄いの夜食を出すのを止めてみたりするが、効き目なし。それどころか、母親が味方をする始末で、一緒に、花札をやって遊んでいたりする。

ついに、正巳は、バットを持って、出て行けと脅すのであった。

家賃滞納夫婦はようやく出て行く。母親も出て行く。

後日、家賃滞納夫婦は、最初から家賃など払う気はなく、方々で、家賃を踏み倒し続けながら暮らしているらしいということを知る。

今度は、カネを持っていそうな夫婦である。いきなり、10万円を提供して、風呂を作ってくれという。ちなみに、映画公開当時(1961年)の大卒初任給(公務員)12,900円、ある乗用車の価格は38万9000円。いまの金額だと、100~200万円というところか。

ところが、せっかく風呂場が完成したと思ったら、いつの間にか戻ってきていた母親が、ずっと風呂に入って独占していた。

困った正巳は、兄弟たちに、母親をなんとかしてくれと持ち掛ける。結局、長男が引き取ることになったが、その代わり、正巳が家を建てるときに貸した20万円を返せと言ってくる。いまの金額だと、300万円以上か。

またしても困った正巳は、カネを持っていそうな夫婦に相談すると、すぐに20万円を貸してくれた。

やったー、いい人と知り合いになれてラッキー、と思ったのも束の間、ある雑誌を見たら、そのカネ持ち夫婦が載っていて、500万円を横領しているらしいのだ。1億円ぐらいか。

警察にタレこむべきか、でも、そうなると、20万円はどうするか。どう考えても、その20万円は横領したカネの一部だしなあ、それ以前に、20万円を返せと言われれば、困ったことになる、という風に悩むのであった。

明子はついに、正巳の上司に、20万円を貸して欲しいと相談に行くが、体を求められてしまう。

そんなことをやっているうちに、家に警察が詰めかけていた。例のカネ持ち夫婦が捕まったのである。

げっ、やべえ、と思っていると、部屋にメモが置いてあり、そこには、20万円については黙っています、と書かれてあった。
一安心であった。

母親が意地汚くて、すき焼きを食べているときに、肉をばくっと口に入れてしまう。まだ、焼けていないよ、と言われると、口の中の肉を鍋に戻してしまう。映画的には、酷い描写だなあと思ってしまうな。

主役には小坂一也さん、さらに、平尾昌晃さんも出演している。両名とも、当時、ロカビリーで大人気の歌手である。演技について、スタニスラフスキーシステムがどうのと言っても、まったく通じなかったに違いない。
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