犬里

パーフェクトブルーの犬里のネタバレレビュー・内容・結末

パーフェクトブルー(1998年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

現実と虚構が入り混じる様子がアニメにしかできない表現で巧みに描かれていて、悪夢のような光景が続く。
自分は何者なのか分からなくなっていく未麻の混乱した視点を通して描かれているので、ミステリーとして難解な印象だけど、終わってみて思い返すと「なるほど」となる。
終盤の、軽やかなスキップで音もなく追ってくる未麻が恐ろしい。
インターネット黎明期の本作、インターネットやオタクを気持ち悪いものとして描いているのも印象的だった。SNSが当たり前になっている昨今、なりすまし問題はもっと身近になってしまっているよね。
背景となる街の風景にも、セクシーに撮られた女性のポスターなどが堂々と貼ってあったりと、時代を感じさせる。コンビニに並んでいたエロ本しかり、若い女性を性的に消費する、そしてそれを街中に堂々と掲示する。あーこの頃ってこういう時代だったよなと思いながら観た。未麻はその時代に流されてしまった存在なんじゃないかな……。

未麻は周囲に進められるがままにアイドルから女優になり、本当は嫌な仕事でも断らず笑顔で引き受けてしまう。「みんなに迷惑をかけられない」と言って泣き叫ぶシーンが印象的だったけど、これも誰にも言わずに自分一人だけで嘆いて終わらせてしまうんだな。
あの終わり方は、そういう、自分の意思が弱く周囲に流されてしまう性格の未麻が、本物の自分自身を得られた(さらに鏡の中=真実の姿にそれを言わせている)ということなのではないか。

原作「竹内義和」に一番びっくりした。オカルト・怪談界隈でよく見る作家のおじさん……というイメージだったんですけど、この作品の原作者さんでしたか!
犬里

犬里