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落下の王国のKentaCのレビュー・感想・評価

落下の王国(2006年製作の映画)
4.0
事故で下半身不随となったスタントマンのロイが、入院中の病院で出会った少女に自作のおとぎ話を聞かせる中で、心を通わせていく物語。

劇中劇として語られる、アラビアンナイトとネバーエンディングストーリーを掛け合わせたような復警冒険活劇、そのビジュアル面は独創性と芸術性に溢れ、砂漠の中だからこそより際立つその色鮮やかな世界観に視覚的にとても楽しめました。
特に引きの画がキマりまくっていて、素晴らしかったです。

ストーリー面でも、ただの劇中劇に終わらず、現実世界での語り手と聴き手の関係が、現実と物語で相互に影響を及ぼし合っていき、現実の状況やその語られる物語に込められた意味が徐々に、そして鮮明に浮かび上がってくる、
という構成が非常に巧みで惹き込まれました。

寓話的物語にすることでしか消化できない思い、
物語ることとその体験を他者と共有し受け止めてもらうことによる心の癒しと救済、
そして落下=人生の転落からの再起、が少女との心の触れ合いを通して繊細かつ丁寧に描かれている、そんな作品でした。
昔から気になっていた作品だったので、これがターセム・シン監督の世界観か…と十数年の時を経てついに体感することができて良かったです。
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