アラサーちゃん

落下の王国のアラサーちゃんのレビュー・感想・評価

落下の王国(2006年製作の映画)
3.0
🎬
「落下の王国」
左腕を折って退屈な入院生活を過ごす5歳のアレクサンドリアは、同じく入院中のロイという男と知り合う。彼はスタントマンをしており、怪我をしてベットから動くことが出来ない。ロイの、六人の勇者が出てくるおとぎ話に夢中になるアレクサンドリアだったが、彼の行動にはある目論みが潜んでいた。2006年、印・英・米。

しもむーさん@shimomuudayo のpostで気になってウズウズしていたので、早速観た!面白かった、というか、ほんと観てよかった!

ロイとアレクサンドリアが登場する、100年前のLAがグレイッシュに映し出されるのに対しての、おとぎ話のなかの圧倒的な映像の美しさ。
衣装の色彩美、壮大な風景美。
自然の美しさ、シンメトリーの美しさ、踊る絵画のような世界観。

これはただひたすら、アレクサンドリアの卓越した想像力によるもの。
語り部のロイは、ある目的のため語ってるだけだし目の前が真っ暗なので、おとぎ話の世界をあんなに鮮やかに映し出すことなんてできない。

4年の歳月をかけて13の世界遺産をめぐり、24カ国をまわったという恐ろしいスケール。なんかもう、すごすぎて笑う。

おとぎ話の中身は、とくに魅力もないストーリーなんだけど(正直、失恋男の私情挟みまくりの情けない作り話としか)、アレクサンドリアはそれをとても気に入って、ロイに続きを急かすのよね。
アレクサンドリアの感性の高さと、飽き飽きしていた入院生活のなかで待ちに待った刺激だったのだろうなということがよーくわかる。

途中で仮面をはいだおとぎ話の主人公はロイになっていて、やがてアレクサンドリアも物語に登場し、メインキャラクターになっている。
とある目的のためのご都合主義なロイのおとぎ話は、やがてそれぞれの生き方を変える2人の物語になっていく。

ロイは立派な大人であり、アレクサンドリアは社会性も身につかない子どもで、ひいては移民なので英語もまだ堪能とは言えない。
だけど、発想力や感受性という観点でいえばアレクサンドリアはロイの何倍も上回っているし、
“重く苦しい過去の傷を背負いながらもニコニコと生きる”アレクサンドリアと、“失恋した挙句に仕事で大怪我し、生きる希望を失った”ロイ、ここでも見えてくる人間性の深さ、浅さ。
直接的ではないけども、中身の外見のアンバランスな比較を感じさせてくれるところが面白い。

やっぱりテイストは「バロン」と同じかな、と思った。
男が少女に聞かせてやるおとぎ話。実際の人物が物語に入り込むところ。夢のような世界観。
「バロン」の、寝ている時に見る夢のような支離滅裂さに比べると、おとぎ話の内容はとても浅いけど、おとぎ話から醒めた時のふたりのキャラクターの肉付けがとてもよくて、これはこれで好きです。