HicK

八日目の蝉のHicKのレビュー・感想・評価

八日目の蝉(2011年製作の映画)
4.3
《ふたりを繋ぐ景色》

【希和子】
永作博美演じる希和子は真面目な人物。汗水流しながら働き、娘へ無償の愛をそそぐ。周囲からの信頼も厚い彼女。そこには罪人であるという顔はない。物語を追っていくと、罪を犯した人間だという事を忘れてしまい、罪の方から彼女たちの幸せを壊しに来てるという錯覚もあった。

とは言っても、本妻の子を誘拐してしまった張本人。

【男に狂わされた女たち】
希和子を責めきれない理由は男側にあった。彼女が罪を犯した原因も、子供が産めない体になった理由も、本妻である恵津子が情緒不安定になったきっかけも丈博にある。さらには、娘の恵理菜(薫)が妊娠し、希和子と同じ立場になってしまうのもまた男のせい。男たちに人生を狂わせ、取り残された女たち。

【八日目の景色】
「八日目の蟬は他の蟬よりも様々な景色が見られる」というセリフ同様に、希和子は薫と共に様々な景色を見たい/見せたいと思っていた。それを表すかのように劇中では美しい景色が度々映し出されている。恵理菜も幼少期に見たであろう美しい景色に触れていくうちに希和子と同じ思いを抱く。彼女たちだけが見た「景色」で繋がる2人。残された女たちと八日目の蝉にだけ許された美しい景色だった。

【キャスト】
俳優陣が素晴らしい。もちろん永作博美や井上真央も良かったが、個人的に好きだったのは本妻を演じた森口瑤子。冒頭の「死んでしまえばいい、死ね!」と罵倒する彼女に圧倒された。

【総括】
ズンっとくる重さ。ただ、罪に対する善悪以上に過去と向き合う恵里菜に焦点が当たり、幸せも希望も伝わってくる作品だった。

「景色」が2人を繋ぎ、愛を伝え、希望へと繋がる物語。
HicK

HicK