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ダンス・ウィズ・ウルブズのいののネタバレレビュー・内容・結末

ダンス・ウィズ・ウルブズ(1990年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます



初観賞。ケビン・コスナー監督&主演。南北戦争後、フロンティアを見たいと自ら「砦」への赴任を志願。スー族との交流を通して、思索を深め、生き方を模索していく、というお話。


スー族をはじめとして、ネイティブ・アメリカンの行き着く先が、「ウインドリバー」だということが、どうしても頭のなかをよぎってしまうので、スー族の生活や生き方が素晴らしければ素晴らしいほど(風景も素晴らしい)、かえって観ていて辛くなる。ポイントごとの戦いに勝利しているのにもかかわらず、ケビン・コスナーの表情が、どんどん苦悩に満ちたものになっていくのと同じように、私も内省に走りたくなる。 1990年製作ということだけど、白人至上主義といったらよいのかどうかわからないけど、勝った者が強いといった社会や歴史に、疑問を呈するような本作が上映されたことの意義は、とても大きいものだったと思う。そして、その意義は、時間が経過した今でも色褪せてないと思う。映画館で観ることが出来て良かった。


ケビン・コスナーが、スー族と仲良くなればなるほど、孤独を深めていくといったモノローグが心に残る。よくわかる気がした。仲良くなればなるほど、好きになればなるほど、自分は何者なのかを問わざるを得なくなる。そして、たき火のまわりでのダンス。あれは凄く良かった。心を揺さぶられた。馬と狼とバッファロー(タタンカ)の名演も見逃せない。主役の行動には少々突っ込みをいれたいし(忘れ物、取りに行かないで!そもそも置いてきちゃいかんでしょ!)、最後に選択して決断した行動も、あれで良かったのかと首をかしげたくもなる。だから、かえって、観終わったあとも、どうすれば良かったのだろうかと考えちゃう。


情緒的な劇判だったけど、主要な劇判は1曲のみで、それがひたすらリピートしていたような気がする。モリコーネ大先生のような音楽とか、SWみたいに登場人物ごとにテーマ曲のようなものがあったらなぁ。「蹴る鳥」(本当に素晴らしい聖人だった)のテーマ曲とか、「風になびく髪」「拳を握って立つ女」とか、スー族各々方のテーマ曲を所望(ない物ねだり)♪ あと、ポーニー族のテーマ曲も欲す。勝利をスカッとよろこべる瞬間もあったら、なおうれしい。でも、そうすると、全然違う映画になっちゃう!困ったなあ。



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〈追記〉 2024年1月下旬
「ヴェトナム西部劇のサイクルが一段落する70年代なかばには、かつてアメリカの正義の概念と一体だった西部劇は、アメリカ文化のなかで居場所を失っていた。(略)たしかに、90年代前半には『ダンス・ウィズ・ウルブズ』と『許されざる者』の二本がアカデミー賞作品賞を受賞し、西部劇への注目が一時的に高まった。多文化主義の時代にふさわしく、マイノリティの視点を積極的に入れた西部劇が続々と作られた。」
(川本徹『フロンティアをこえて ニュー・ウェスタン映画論』森話社 2023年、13頁)
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