こたつむり

発狂する唇のこたつむりのレビュー・感想・評価

発狂する唇(1999年製作の映画)
3.8
★ 宝くじよりも高確率で楽しめる作品。

人を選ぶ映画…なんて言いますけれど。
本作も同様でした。ただ、他の作品と違うのは「選ばれたことが喜ばしい」と素直に言えないこと。繁華街で「本作を面白い」なんて言ったら石を投げられそうです。

そのくらいにヤバい描写が満載でした。
共感を拒否する人物描写。潜在意識を刺激するお色気。脳細胞を破壊する倫理観。シュールなギャグ。三半規管を狂わせる歌謡曲。土曜ワイド劇場を彷彿させる旋律。ガチで臨むカンフーアクション。

うーん。
文章にすると普通に見えますけれど。
これらの組合せは毒素100%の化合物。ドロドロでぐちゅぐちゅでベロベロなのです。しかも、製作されたのは世紀末。物語に意味を見出しても眼前に転がるのは“破壊”の一言。

これが外国の映画ならば。
もう少し宗教色が強いのでしょう。そして、カルト映画として名を残すのかもしれません。しかし、残念ながらここは日本。神に唾を吐く描写はありません。

また、社会問題にもサラリと言及しているのが心憎い話。過剰なマスコミ報道とか。横暴な警察とか。心霊商法とか。勿論、それが主眼ではありません。ただ、どんなに破綻した物語でも世相を反映する…ということが顕著に理解できました。

そして、役者さんたちに目を向けると。
主人公を演じる三輪ひとみさんの“隙だらけの衣装”から漏れてくるフェロモンはハンパ無し。いやぁ。眼福の限りです(エロ漫画を彷彿させる展開は…個人的に微妙でしたが)。

あと、驚いたのは大杉蓮さんが出演していたこと。文字どおり“身体を張る”演技(というか踊り)に、熱い熱い熱い役者魂を感じました。阿部寛さんも出演していましたが…こちらは普通でしたね。

まあ、そんなわけで。
マイノリティによるマイノリティのための問題作。バチリと上手くハマれば、延々と語りたくなる物語…ですが、悪いことは言いません。他の作品を観た方が有意義だと思います。

でも。
明快な解答がないから問題作なわけで。
眼前に存在する問題から逃げるのは許せない…そんな姿勢は格好良いと思います。怯まずに挑むのも…アリじゃないでしょうか。但し、ご利用は計画的に。
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