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ジャッキー・チェン/ドラゴン特攻隊のohassyのレビュー・感想・評価

4.0
ジャッキー映画といえば、僕ももちろん「プロジェクトA」を真っ先に挙げるし、それ以降の五福星や香港国際警察、サイクロンZ、サンダーアーム等々、公開されるたびに母親と映画館で観てきた。
時代劇ものはそれほど好きではなかったのだけれど、酔拳やヤングマスターはやっぱり面白いし、酔拳2はジャッキー映画の最高峰の1つだと思う。

でも「ジャッキー映画といえば?」と言われたら、僕はこの作品を挙げることが多い。
あるシーンと、その辺りの雰囲気からくる切ない感じがずっと忘れられないからだ。
これをトラウマというのかもしれない。
知っている人の方が少ないと思うけれど、多分見ることもないと思うので書いてしまおう(配信はもちろん、レンタルでもなかなか出会うこともないし)。

舞台は第二次世界大戦中の、中国と思われる国。
日本軍が、連合軍の将軍たちと金を奪って逃げたちめ、取り返すための決死隊が編成される。
ドラゴン特攻隊だ。
中心となっているのは、歴戦の強者・ドン中尉。
彼がジャステイスリーグさながら、いわくつきの連中をリクルートし、捜索の旅に出る。

ジャッキー映画と言っておいてなんだけれど、ジャッキーはこの特攻隊には含まれていない。
彼の役どころは、全国を放浪しながらしのぎを稼ぐ、詐欺師の博打打ち。
行く先々でこの特攻隊と出くわすことで、物語と関わって行くわけだ。
だからそんなに出番もなくて、ゲスト出演という感じ。

こう書いてみるとまあ王道な話なのかなと感じるのだが、これが実に支離滅裂なナンセンスコメディなのだからびっくりする。
正直細部までは覚えていないのだけれど、場面ごとのつながりはほとんど気にしていないように感じるし、会話も翻訳のせいか元々なのかわからないけれどどうリアクションすればいいかわからないこと多数。
訪れる危機も、突然アマゾネス軍団に襲われたり、幽霊屋敷でキョンシー様なものと戦ったりと、コントでももう少し設定を大事にするだろうレベル。
あれ、なんの話だっけ?ってなる。
そんな中ジャッキーは、ニワトリを盗んだ帰り道でアマゾネスと戦う特攻隊と出くわし、片手でニワトリを守りながら片手でアマゾネスを倒したりする。

物語的には、アマゾネスとの戦いだったか、リーダーのドン中尉が殺されてしまい、隊員だけで救出に向かう特攻隊。
ついに日本軍にたどり着くも、侍や忍者、さらに影にはハーケロンクロイツを掲げたドイツ軍が潜んでいて、古びた小屋に籠城しながら死を覚悟して戦うことに。
そこに、ジャッキーも加わって。
この辺りから、今まではなんだったのかと思うほどに急にシリアスになる本作。
これまで主演としてコメディを繰り広げてきた特攻隊員たちが、どんどん殺されていく。
中でも1番のお笑い担当だった奴が、床下から刀でお尻からブスリとやられるシーンが、どうしても忘れられない。

「里見八犬伝」とか「七人の侍」、七人の侍をベースにした「プライベートライアン」など、そうやって一人ずつ犠牲になっていく描写が僕は大好きなのだけれど、本作はとにかくショッキングだった記憶がある。
子供の頃に体験しているというのも大きいと思うけれど、もしかしたら本作をきっかけにそういう描写に感じ入る様になってしまったのかもしれない。

その後、実はドン中尉が生きていて、助け出すはずだった連合軍の将軍たちと金を山分けしようとしていたことが判明。
中尉とジャッキーの一騎打ちとなるが、このシーンが結構長くて凄まじく、まさに死闘。
今までの流れから、もしかしてジャッキーさえもやられてしまうのでは?という悪い予感がよぎるほどに。

結果的にはジャッキーは戦いを制し、生き残ったボンクラ将軍たちに「戦争反対!」と捨て台詞を吐いて去ってゆく。
この頃には、壮絶な戦いを経たジャッキーの虚ろな表情や、死んでしまった仲間たちの描写が澱のように心に積もっていて、なんだか悲しいような虚しいような、名作戦争映画を見ていたかのような遣る瀬無い感動を覚えてしまう。
世の中のレビューを見るに、僕だけかもしれないけれど。

ジャッキー映画は他にたくさん面白い作品があるので、わざわざ見ることないとは思いますが、僕はどこかで見かけたら必ずキープしたいと思っていて、誰かに好きなジャッキー映画はと聞かれたら、ソフトを聞かれた相手に貸すことで答えにしたいと密かに思っている。
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