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みなに幸あれのohassyのレビュー・感想・評価

みなに幸あれ(2023年製作の映画)
3.5
選考委員として参加している日本ホラー映画大賞から、初の商業映画が公開されました。
本作は初代大賞を受賞した11分の短編「みなに幸あれ」をベースに、主人公や設定のストーリーを掘り下げ長編ストーリーにしたホラー作品で、下津監督の初商業映画でもある。
荒削りな部分も多々あるけれど、デビュー作らしい熱意と想いの詰まった勢いのある作品に仕上がっていると思うし、古くて大きな実家での老人の奇行などはシャマランの「VISIT」にも似た、結構強烈な生理的な嫌さだった。

普段ホラー映画を観る機会はあまりないのだけれど、本作のような根源的な人間社会がテーマの暗喩として表現された作品は好きだ。
誰もが普段からそこはかとなく感じながら蓋をし続けている格差と犠牲、何よりそれに気づかないふりをし続けて少しでも自分にとって有益な状態を維持しようとする自分自身という痛いところを、閉塞的な田舎町という舞台装置を借りて生々しく禍々しいものとして描き、耐え難い感情を掘り起こす。
クリエイターとは、アーティストとはこうあるべき、という見本のような作品である。

僕のような「自分可愛や」な人間が多数を占める世界で、しかしながら確かに存在する「それ」をこんな形で表してしまって、一体どんな答えを示すつもりなのだろう?と、ストーリーが進むほどに不安になる。
できればその答えは作品を観ていただきたいが、僕は幸せを纏った絶望と見ました。

ホラー映画には欠かせない美女の役を、大好きな古川琴音が力一杯演じる姿をずっと見続けられるという意味でも、観て良かったと思う。
正直幽遊白書を最後まで観れたのもほぼ彼女のおかげだったし。

1/19(金)公開です、機会があったらぜひ。
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