ohassy

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章のohassyのレビュー・感想・評価

3.5
本作は、キャラクターの魅力全開で、設定も良い。
何より若い頃に、いや歳を重ねても漠然と感じていた他愛無い日常に気づかない程度にうっすらと、でも確実に浸透し拭がたくまとわりつく不穏なヴェールを、見事に表現している。
気づかない程度にちょっとずつちょっとずつ時間をかけて膨らんでいた風船がいつの間にか手に負えないほど大きくなってしまい、いつどんなことがきっかけで破裂してしまうかもしれないほどなのに、もう気づかないふりをし続けながら明るく振る舞うしかない。
そんな、僕らの毎日のような空気を。

原作が発表された当時は、東日本大震災後に決定的に変わってしまった世界を、「謎の巨大宇宙船がただ浮かんでいる」というビジュアルで表現していたのだろうが、10年経った今、皮肉にもそれは「コロナ禍」を経てまたしても決定的に変わってしまった僕らの世界を表現することになった。
そう考えてみると、いつの時代にもそういうインパクトと、その後も変わりなく続けていかなくてはならない僕たちの生活というものはあるもので、好む好まないに関わらず続けなくてはならいのだなと、少し暗澹たる思い🥺が込み上げる。

時代を代表するアーティスト2人が演じる門出とおんたんにとってもそれは同じで、どんなことがあっても日々を楽しく生きていかなくてはならない。
それは、自分たちが思っているよりタフなことなのかもしれないなと、2人のなんでも無いと振る舞う日常を眺めながら思ったりする。
しかもその、楽しく生きようとがんばっている日々は、ひっくり返されるための伏線でしか無いのに。

僕らの平穏で楽しい日々もいつかどこかで壊されるための伏線でしか無いと考えてしまうと、これはもう絶望するしかないのだけれど、果たして本作はどこに向かうだろう。
原作を読破していない僕には予想もつかない。
特に後半に長く挿入される回想(あるいは捏造された記憶)は間違いなく後章につながる最も重要なシークエンスだと思われるが、今のところ何のために語られているのかさっぱりわからない。
全体を通してすごくいい感じの映画だという印象はあるけれど、本作はほぼ全編がプロローグという映画的事情も相まって「ふわっといい感じの映画」というのが今のところの評価だ。

思えば浅野いにお作品はだいたい目を通しているけれど、どれも読破したことがない。
デデデデはその中でも最も気になっていたのだけれど、今まで何度かチャンスはあったはずだけれど読むには至っていなかった。
絵柄も設定も空気感もキャラクターもとっても好きなのにな。
僕が浅野いにお作品に対して勝手に持っている、本作を見て感じたような「ふわっといい感じの漫画」という先入観のせいかもしれない。
後章を観終えた時、果たしてどうなるだろう。
楽しみだ。
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