ねまる

ラスト、コーションのねまるのレビュー・感想・評価

ラスト、コーション(2007年製作の映画)
3.7
日本統治下の上海と香港での、抗日活動に文字通り身を投じていく女性の物語。

しばらく香港映画を観てきたけれど、アジアから見た日本を感じて恥ずかしくなった。日本が過去に行ったこと、視点なくちゃんと知らなきゃいけない。
この映画の丁寧さを感じたのは、日本人の役が日本人だろう言葉、振る舞いで演じられていたこと。歴史を伝えるのは、教科書ではなく物語。どれだけの人がその物語を知るかで、後の歴史は変わりさえさるのだろうな。
映像もといカメラワーク、小物の細部までこだわったセット、チャイナドレスの上に西洋のトレンチコートを羽織る組み合わせに終始うっとり。

主人公を演じるタン・ウェイは不思議な魅力を持つ女優さんで、立体感のある黒目の動きが、観客の関心を誘う。背が高くスタイルも良いのに、丸顔で童顔なところが、女学生らしさも併せ持つのかな。
私も歌が上手なの、と歌い出すシーンの可愛らしさと言ったら誰だって惚れます。
そこにターゲットとして現れるトニー・レオン。画面に映るたびにゾクゾクする。怒りを感じた時、鼻の近くの頬のあたりがピクピク動くのに気付いた時
、私のゾクゾクがMAXだった。そんな顔初めて見た。ただ、私はイー(役名)の恐ろしさに、演技が凄すぎて、もうこれ以上観られないと3回に分けて観ることになったのも確かです。

公開時、過激なシーンが話題になったそうだけど、そのシーンにこそ意味があるというのも事実で。愛し合うシーンというより、むしろ哀しさを覚えるんだよね。
練習をするところも、乱暴にするところも。
禁断の、というよりも、うちに隠した寂しさをぶつけ合う感じ。アクションシーンみたいだったと役者が語るのも分かる気がする。

どこか主人公たちには青さがあって、青さゆえのまっすぐさと、青さゆえの甘さがあって、
黒く染まった体制側にも、黒くなってでも生きていかなきゃいけないほろ苦さがあって、
なんかね、もう、なんだかなぁ。
それを示しているのも過激な場面だったりするので、避けては通れないけど、また観たい良作でもある矛盾。

イーの最後の表情。
表情があまり変わる役ではないのに、やっぱりトニー・レオンの眼は最強だなぁ。
あそこで終わるところまでが映画なんだ。
ねまる

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