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レインマンのしゃにむのレビュー・感想・評価

レインマン(1988年製作の映画)
4.5
第三の雨男。
個人的に雨男って言われたら土砂降りの雨の中で陽気に歌うジーン・ケリーと血の雨の中で陽気に歌うアレックスを思い浮かべますが、次から雨男って言われたらダスティン・ホフマンも思い浮かべないといけなくなりました。自閉症の男性という難しい役柄を見事にホフマンが演じています。アル・パチーノが盲目の退役軍人を演じたセント・オブ・ウーマンを観た時に感じたような、背筋がゾクゾクする感覚が再び来ました。演ずるとはこのことだ。演技だということを忘れさせるほどの自然な演技です。実在する人物を目にしている感覚に捕らわれてレイモンドを身近に感じました。まさにアカデミー賞に相応しい芸術的な演技ですね。弟役のトム・クルーズも最初の自分の利益ばかり考える自己中心的な駄目な男から最後の本物の兄弟に見事に演じ分けています。遺産欲しさに障害のある兄を病院から半ば拉致する形で連れ出し保護権を求めて裁判を起こそうとする。うわぁ…生々しい動機にリアリティーがあります。自閉症に理解がなくてレイモンドの挙動にイライラし乱暴に接するあたりはもっと優しくしてあげなよとこっちがイライラ。ギャンブルにレイモンドを利用してぼろ儲け…うーんこれでいいのかな。前半はちょっと好きになれないキャラクターでしたが、ベガスのホテルでダンスレッスンをするシーンで印象が変わりました。触れられるのが嫌いなレイモンドに抱きついて案の定拒絶された時に「抱きたかったよ…」と悲しげに呟くチャーリーに静かな愛情を感じました。血のつながりってゆりかごから墓場まで決して絶えない。兄弟の絆は短期間でも芽生えて当然なのかなと思いました。レイモンドがチャーリーの名前をスペルを区切って呼ぶ素振りが凄く好きです。
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