「トイ・ストーリー」シリーズのジョン・ラセターが手掛ける2006年の作品。実は今回が初鑑賞になる。
ポスター等では、擬人化したレースカーの可愛いキャラクターが前面に出ているが、本編ではいきなり物凄いスピード感。ここは制作陣が最も拘ったポイントらしく、車体の質感や豪快なカメラワーク、カットインを多用した構成は、完全にレース中継のそれである。何よりも車好きを満足させる要素をしっかり押さえている。
このクルマ映画としての完成度の高さと、擬人化したキャラクターの、ある意味アンマッチが本作の魅力という事になるだろうか。この擬人化もまた独特で、日本で「車の顔」と言えば、フロントライトが目に相当するのだが、本作ではフロントガラスが目になっている。つまりドライバーが存在しない世界観なのだ。
マスコミの記者も、昆虫も、植物も、全て車の形で登場するし、一部のキャラクターは車庫ではなく、普通の部屋で生活している。居眠り運転も、追い越しも、ガス欠も、全て車が一人称で表現される。このぶっとんだ世界観は、日本からでは出てこないだろう。
一人称が人間ではなくなることで、ドラマとしてのメッセージ性が予想外にダイレクトになるという発見。さすがピクサー、今作も攻めている。各キャラクターの友情物語や、自動車産業の裏話、世代を超えた伝承の話等、大人でも楽しめる作風は、本作でも健在だ。
主題歌はチャック・ベリーやローリング・ストーンズによるバージョンで有名なロックンロール「ルート66」のカバーである。