むさじー

羊たちの沈黙のむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

羊たちの沈黙(1990年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

<猟奇犯罪と狂気の精神科医に挑む女性捜査官の追跡劇>

タイトルの「羊たち」が何を指しているのか。
なお、原題はlambsなので、正確には「羊」でなく「子羊」である。
様々な論議を呼んで、中にはかなり深読みの解釈もあるが、私は次のように解している。
1)犯人バッファロー・ビル:連続猟奇殺人犯の手口は、殺してから皮を剥ぐというもので、彼にとって対象の女性は子羊そのもの。
また、子どもの頃に受けた虐待が後の彼の精神的病理を生んでいて、被害者でもあった子羊バッファロー・ビルは、そのトラウマと闘い続け、凶悪犯罪を生んでしまった。
2)クラリス自身:幼少期の子羊が屠殺されラム肉とされる目撃体験がトラウマになり、子羊の悲鳴が鳴りやまない。
その子羊と事件の被害者を重ね合わせ、助けたいのに助けられないと焦り、いつまでも子羊の呪縛から抜けられない。
この二人を繋ぐのがレクター博士。
バッファロー・ビルの犯罪が、子どもの頃の虐待から生まれたことを指摘し、自分の患者だった犯人を示唆する。
そしてクラリスの捜査が進み、二人がお互いを探り合い、そして相手を深く知る中で、信頼関係のようなものが生まれていく。
ラストの電話で、レクターはクラリスに言う。
「子羊は鳴き止んだかね?」。
これでトラウマが止めばいいのだが、事件が解決しても、人間の記憶はそう簡単に消せないし、また新たな子羊が現れる、という予言であり忠告でもあるのだろう。
アカデミー主演男優・女優賞ダブル受賞という二人の演技が凄い。
特にアンソニー・ホプキンスの不気味さ・迫力は特筆もので、背筋がゾッとする怪演。
単に恐怖を煽るというのではなく、その内容の奥深さ、卓越した表現力から、サイコ・スリラーの傑作だと思う。
むさじー

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