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羊たちの沈黙のmatchypotterのレビュー・感想・評価

羊たちの沈黙(1990年製作の映画)
4.3
不朽の名作系『羊たちの沈黙』。

人肉食で完全な異常者として、牢に監禁されてるレクター。
成績トップで上司に目をかけられ研修生にして、なかなか普通に口を割らないレクターの尋問官に抜擢されたクラリス。
この2人の問答で、事件や、クラリスのトラウマ的な過去の出来事や、レクターの潜在的な狂気など、この映画で語られる全てが少しずつ詳らかになっていく様がとても面白い。

メインの連続猟奇殺人の犯人を追うべく、その犯人像を掴むためにクラリスが同族であるレクターから話を聞き出そうとするが、逆にレクターもクラリスに興味を持ち尋問する。

このやり取りにおいては確かに異常者で年老いたレクターと若くして美しく頭脳明晰なクラリスという構造で、捕まってる側とそれを問いただす側で明らかな立場が見えているのに、どこかそれが逆転していくというか。
もともと追ってる事件が“異常”だからか、レクターの言うことが驚くほど的を得ていることになっていって、いつのまにか“普通”のクラリスの方が見当違いになっていき、それをレクターが正す。
それを認めたくないクラリスではあるが、レクターとのやりとりを反芻し、一理あると思い始めて動けば動くほど真相に近づいてしまう。。。

この人肉食べるという大罪を犯した異常なオッサンと、汚れなき完璧な頭脳と美貌を持つ女研修生という正反対な2人が異常猟奇殺人を通して通じ合っていく、という異常な光景。
正反対なはずなのに、もともと2人ともとんでもなくロジカルで、現実的で、常識に囚われない思考回路を持っていることで噛み合っていき、ついでに完璧に振る舞おうとするクラリスの深層心理も暴かれ、内面を裸にされていく様が何とも言えない不気味さを感じる。

クラリスが初めてレクターに会った時の帰り際に隣の折の男から受ける仕打ち、
レクターが常に誇らしげに檻の中からクラリスに問いかける姿勢、態度、
レクターが檻から逃れて建物内から逃げ出すまでの一連の仕掛けと行動、
クラリスが行き着いた犯人の家での決着の様相。

など、象徴的なシーンが多く、これらのインパクトがとても衝撃的で、これらはこの先の他の映画にも大きな影響を与えていると思う。
他の映画で似たようなシーンをかなり観るけど、元ネタはこの映画?ではないだろうか。

ジョディフォスター、美し過ぎる。
冒頭のランニングシーンや風呂上りのローブ姿は化粧っ気がなくてあどけないのに、捜査に出る時やレクターに会う時はキリッと大人びる。そのせいでもはや年齢もわからない魔性の美貌。
そういう意味で、この映画の中のクラリス役としては適役。
男社会の殺人事件の捜査や地方の閉鎖的な調査に入り注目を浴びる1匹の子ウサギのような存在、またレクターが美貌よりも内面に興味を持ち彼女にだけは彼女の情報と引き換えにそれなりの情報を出す特別な存在、クラリス。

アンソニーホプキンスのレクターとクラリス。
マジで正反対の2人が正反対の方から歩み寄って導き出す問答、何か妙に気持ち悪いんだけど、目が離せない。
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