継

勇気あるものの継のレビュー・感想・評価

勇気あるもの(1994年製作の映画)
4.0
広告代理店をクビになったエリート広告マンのビル(デヴィート)。
家のローンや別れた妻の慰謝料も払えず、次の職も見つからずに失業保険もらおうとやむなく尋ねた職安で、陸軍の臨時教師を紹介される。。。

『レナードの朝』のペニー・マーシャル監督と『ツインズ』や『ジュマンジ・ネクストレベル』のダニー・デヴィートのコンビによる、若干コミカルな軍隊ものヒューマンドラマで、
『いまを生きる』の全寮制の学校を陸軍に、引用されたホイットマンなどの詩をシェイクスピア作品にそれぞれ置き換えて、派生する出来事を要領よくかいつまんで(若干都合良く,笑)独自のストーリーに仕立てた '94年製作の映画です。


生活の為に教師を引き受けたビルには情熱なんかコレっぽっちも無くて、生徒も最初は教室へ軍隊式にキチッと行進して来るものの、ビルが民間人だと知った途端に悪態をつき始めるヤル気ゼロな連中。
元より、新兵には担当教官(グレゴリー・ハインズ)が短期間で実戦に必要な体力と集団としての規律を叩き込む訓練を行ってて、8人はそこから落ちこぼれて他の新兵達から “ダブルD(犬の◯ソよりバカの意味🐶)” とバカにされてた連中。

ビルに託されたのは最低限必要な言葉使いやルールを教えて訓練に付いて行けるようにする、云わば補習的な役割に過ぎなかったと思うんですが、8人それぞれの境遇を知るにつれて身につまされていくんですね。
で、授業の一環でたまたま読んでた「ハムレット」を “何の本?” と聞かれて “sexと殺人と近親相姦の本だ” とザックリ答えたら生徒達が俄然興味持って(笑)。
以降は、生徒達の事情とクラスを見下す教官への対抗意識も相まってシェイクスピアを題材に進む, 次第に友情が生まれていくクラスと、教官による厳しい訓練の様子を交互に観せていきます。

つまんないジョークをちょくちょく挟む, ハゲでチビなデヴィートの元々のキャラクターを活かしたキャスティングがハマってた印象です。垂直な十数㍍の壁面をロープを頼りに滑り降りる訓練シーンもあの体型で体を張って挑戦して、観てるコッチがハラハラ🙈
ハムレットのストーリーをrapするシーン(パンチラインはモチロン “to be, or not to be”)が楽しくて、本作では鬼教官役のグレゴリー・ハインズはキャラ的にタップで踊り出すワケにも行かず(笑)さぞや悔しい思いをしたんだろーなって観てマシタ(T∀T)
あと8人の中のトミーがマーク・ウォルバーグに似てるなぁーって思ってたら本人で(笑)、イヤ, 新兵ぶりがあまりにナチュラルだったんで途中まで別の似た人かと思ってマシタww.


ビルが教え子達を引き連れて劇場へ出向き、「ヘンリー五世」の芝居をチラ見せするシーンがあって、この辺りシェイクスピアが好きな方には “ピン!” とくる伏線として後々効いてくる場面が用意されてるんだけど、そこはホイットマンの詩を知らなくても分かるように作られてた『いまを生きる』同様に丁寧な配慮が為されてて、知らなくても理解出来る作りになってました。
『いまを生きる』はこの5年前の'89年製作ですが、こうした良く出来た“改変”はアリだと思います。

個人的には「聖クリスピンの祭日の演説」を単に戦意高揚目的に聞かせる以上に、“生きて帰ることの大切さ” に重きを置いて引用しているように感じて、軍を描いた映画なのに...とちょっと感心した次第。
まぁ当然 “勝利して” がその前提にあるワケで、軍のスポンサードを受けてるハズなんですけどね。

卒業を控え、“みそっかすじゃない事を証明しろ”と本来必要のない期末試験を課すビル。
問題は「ハムレット」の解釈。7人それぞれの答えが気取りが無くて良かったです。
兵士たちを画一的な「一兵力」としてしか見なさない教官と軍の上層部。それに相対する形でビルや8人の成長していく姿を描くストーリーは清々しくて、後味が良いものでした(^^)。
継