にしやん

東京裁判のにしやんのネタバレレビュー・内容・結末

東京裁判(1983年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

戦後日本の進路を決定づけたともいえる極東軍事裁判「東京裁判」の記録を、膨大な記録映像を元に編集した4時間37分におよぶ歴史的ドキュメンタリー作品や。今回劇場公開されたんは1983年初映の本作品の4Kデジタルリマスター版や。いっぺん観たことあんねんけど何十年ぶりやということもあるし、終戦記念日やということもあり、あらためて鑑賞したわ。

今回本作を観て、あらためて知ったこと、気になったことをいくつか。

・アメリカは最初から天皇不起訴の方針で、この裁判の主目的は天皇の戦争責任を追及せず、戦争犯罪の主犯を東條英機にするための裁判であったということ。

・東条も、一度失言をしてアメリカを慌てさせたが、概ねアメリカの筋書き通り天皇の戦争責任回避のための証言をし続けたこと。

・満州国建国を立案し、被告の板垣征四郎(絞首刑)とともに満州事変の首謀者である石原莞爾を、その後東条と対立し事実上軍から追放されていたことを理由に訴追しなかったこと。

・オーストラリア政府の意を受けて天皇の戦争責任を追及するという立場のウェッブ裁判長と、逆にそうならないようにとのマッカーサーからの指示を受けていたキーナン主席検事が裁判の内外で対立し続けたこと。またウェッブはアメリカへの抗議の意味で裁判中一次本国へ帰国したこと。

・東京裁判で裁かれた第二次世界大戦での日本の戦争責任、戦争犯罪の訴追の範囲は満州事変以降であること。

・南京事件(南京大虐殺)については、司令官として南京を攻撃した被告の松井石根(絞首刑)は組織ぐるみでの大虐殺は否認したものの、南京入場の際の日本兵による略奪や残虐行為が行われたことは知っており、一部の兵士によって行われたことも認めたこと。また、裁判において南京事件でのいくつかの略奪や残虐行為は「通例の戦争犯罪」として事実認定されていること。

・ポツダム宣言後に制定した「平和に対する罪」と「人道に対する罪」は罪刑法定主義と法律不遡及の原則に違反しているから、裁くことができる戦争犯罪は交戦法違反のみで、それ以後に作成された「2つの罪」の管轄権がこの裁判所にはないと弁護側は論じたが、この管轄権の問題について判事団は結構手こずり、ウェッブ裁判長は「理由は将来に宣告する」と述べて理由を説明することになしにこの裁判所に管轄権はあると宣言したこと。

・戦争は犯罪ではなく、戦争には国際法があり合法であり、戦争は国家の行為であって個人の行為ではないため個人の責任を裁くのは間違っていると弁護側は論じたが、今でもなお、国家による犯罪について個人を裁くことができるかという根本的な法律上の問題があること。

等々。

約4時間半の長尺にも関わらず、全く眠たならへんかったわ。「東京裁判」は教科書にも載ってる歴史そのもんやからな。歴史上の出来事を映像とは言えそのまま目撃するということ自体が大変貴重な体験やと思うわ。8月15日の終戦記念日に、わし「野火」との二本立てやったな。なかなか感慨深いわ。「野火」の主人公の田村は、実際「東京裁判」を見てどんなことを思たんやろな?
にしやん

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