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フェリーニのアマルコルドのNのレビュー・感想・評価

フェリーニのアマルコルド(1974年製作の映画)
2.7
2019.2.21(Thu)
フェリーニってことでGYAOで配信されてたので鑑賞。
これがフェリーニ…?『道』の…??って感じでした。
『8 1/2』を作った人と思えばまぁわからんでもないですが、そのイメージのせいで、なんでもない日常のブツ切りが逆にカオスにみえました…。「フェリーニの」ってタイトルについてる通り本当にフェリーニの個人的な故郷や思春期に対する回顧や衝動に則って作った作品って感じです。女性陣が色んな意味でインパクトがありました…。フェリーニはヴィスコンティと同じくらい高尚な作家っていう印象だったけど、かなり俗っぽいというか、とりあえず振れ幅が凄まじい作家だなとイメージが変わりました。でもなぜここまで評価されてるのかは謎…。

ムッソリーニが台頭してきた時代を舞台にしてそれなりに描いてはいても、それを肯定も否定もせずにただの1つの出来事として描いているのが印象的でした。ムッソリーニの崇め方がかつての日本の神だった時代の天皇に対するものと似ていて民衆の熱狂ぶりが怖かったです。NHKの「100分de名著」でオルテガの「熱狂を疑え(=何かに熱狂している人々は他を排斥しがちでありそれが独裁政治を生むことに繋がる)」っていう思想が紹介されていたのを思い出しました。番組では今の時代は熱狂しやすいって言ってたけど、熱を向けるものが多様化してる現代よりこの時代の方がよっぽど1つのものに対して熱狂しやすかったんじゃないかと思います。今だったら外国から来た船に対してあんなに熱狂しないだろうし。当時は目新しいものだったっていうこともあると思うけど。でもこの客観的な描き方が、少年時代の社会情勢なんてその程度の関心にすぎないっていう私の個人的な感覚と同じように感じられて少し安心しました。
でもその船のシーンのグラディスカの台詞がこの映画において唯一意味のある言葉だと思いました。
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