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揺れる大地のNのレビュー・感想・評価

揺れる大地(1948年製作の映画)
3.2
2023.3.27(Mon)
アマプラで発見して、ヴィスコンティ作品なので鑑賞。
マイナーすぎて観れると思ってなかった作品が4K画質で観れただけでもう感動。

ネオレアリズモの代表作の1つとして名高い作品だけど、やはり初期の作品は私が好きなヴィスコンティの静かなクレイジーさはまだ感じられず、ただただ辛いな〜となりました。
あれだけひもじい思いをすれば一家離散も致し方ないとしか言えない。つぎはぎだらけのパンツだけでも切なくなってたのに、最後のアントーニの穴だらけのニット姿に胸が締め付けられました。
やろうとしたことは正しかったのに、いつの時代も先進的なことをしようとする人は白い目で見られてしまうのね...。アントーニに倣って他の人たちもついてきてくれればまた違っただろうに。自分が行動するだけではなくて、周りを巻き込む力も何かを変えるときには必要なんだなと思いました。それがカリスマ性というワケね…。
そして何の救いや希望がなくても生きていかなねばならないというラストの圧倒的絶望感たるや。変に死とかで片付けないのがよかったです。

キャストが実際の現地の人々とのことだけど、本当の役者みたいに皆演技が上手でびっくりしました。
でも大衆がワラワラしてるシーンとか、ヴィスコンティが細かいところまで計算して指示を出してるんだろうな〜と感じられるシーンがいくつかあって、そこだけ逆に人工臭く感じてしまった。あと長い…。

いくつかヴィスコンティの作品を観て至った個人的結論は、彼の作品の真髄は貴族社会や美を対象としたときに発揮されるものであるということです。
今作も決して悪いわけじゃないけど、ヴィスコンティである必要性があまり感じられなかったというか、テーマと彼の作家性があまりマッチしていなかった印象を抱きました。一方貴族社会や美をテーマとした後期の作品は彼だからこその独特の良さが明確に感じられる。個人的にはそっちの方が好き。
でも本当に観られてよかったです。
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