半兵衛

危険な場所での半兵衛のレビュー・感想・評価

危険な場所で(1951年製作の映画)
3.5
前半の都会でのドラマと後半の田舎町での殺人事件という全く関係のない二つのプロットを、「孤独な人間が愛を求める」というテーマで強引に引っ付ける脚本&演出の強引なテクニックに感嘆。でもそれ以上にバイオレンスな刑事がヒロインと逢ってから全く違う穏やかなキャラに変貌してしまうことに驚かされる、確かに愛によって人間は救われるというテーマには合っているのかも知れないけどそれにしては違いすぎるよ。

主人公のロバート・ライアンがダーティハリーやゴキブリ刑事など娯楽作品でよくあるノリノリに悪党に暴力を振るうダーティな刑事像ではなく、刑事という職務の中で自分のアイデンティティを見失いそれにあがこうとするように暴力を振るう精神を疲労した刑事キャラなのが独特。そんな不安定なロバートの人間性を捜査の合間に見せる事件の連絡を受けて食事をゴミに捨てたり執拗に手を洗うなどちょっとしたプライベートの時間で表現するのが巧み。そんなヒリヒリした状態の彼だからこそ、左遷されるという設定もそれなりに納得できるし後半の展開が救いに思えてくる。

人を殴ったり拳銃を撃ったりといった直接的な表現ではなく、主人公や娘を殺された父親による凶暴性に満ちた言動や荒々しいカメラワークで暴力を映画に充満させる演出が印象的。特に前半の女性が撃たれてその目前にいた刑事たちが荒いテクニックのカメラワークで犯人を追う場面や、後半女性が殺され犯人を追跡する主人公たちが犯人の姿が一切登場しないのに足跡と光だけで追い詰めるシーンなど他の映画では見られない不思議なアクションは必見。

そして後半突然出てくるヒロインのアイダ・ルピノによる女神のような存在感が、愛とそれによる心の救いの物語に説得力をもたらす。
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