ひゅうどんこ

歓びを歌にのせてのひゅうどんこのレビュー・感想・評価

歓びを歌にのせて(2004年製作の映画)
4.0
 18年ぶりに映画界へ戻ってきたスウェーデンのケイ・ポラック監督が提供する人生讃歌。

 1986年2月28日、当監督作『Love Me !』(原題: Älska mej)が本国公開された初日の夜、オルフ・パルメ首相が、ストックホルムの映画館から出てきたところ、暴漢が放った2発の銃弾を浴びて死去す。その日を境にメガホンを持てなくなった監督の胸中は察して余りあります。 

他にもスウェーデンの要人の惨劇として、国際連合第2代事務総長ダグ・ハマーショルドが1961年9月18日専用機にてコンゴに向かう途中、ローデシア・ニヤサランド連邦(現ザンビア、マラウイ、ジンバブエ辺り)にて墜落死去(撃墜説とパイロットエラー説があり)したり、アンナ・リンド外務大臣が、2003年9月10日デパートで買い物中に刺殺されたりしています。
フィンランドのムーミンみたいな、クマやブタのバムセとかMOZのエルクみたいな人ばかりが暮らす平和でファンタジーな国かと思いきや、複雑な歴史や古疵もある様子。

 過去に鑑賞した『歓びを歌にのせて』の本国版をYouTubeで見つけて視たものの、シーンとシーンとの繋がりが唐突で不自然なところが幾つもあって、それは説明を省くためにあえて意図的に削られたような感じで、そこに意味することを考えた時に、スウェーデンというお国に何かヒントがあるのではないかと思ったんですよね。 
、、ということで、この映画をより知るために、よく知らないスウェーデンについて今回は調べてみました。

 「ヨーロッパの日本」と言われることもあるらしいスウェーデンですが、見えない敵との現在進行形の闘いにおいても、意外に日本との共通点が。

●フル・ロックダウン型…中国
●段階的ロック・ダウン型…欧州各国等
●PCR検査ローラー作戦型…ドイツや韓国
そして●日本とスウェーデンがとっている大人の対応型。
抗体を持っている人の集団免疫を盾にしてワクチンが出来るまで緩やかな感染で時間を稼ぐという、スウェーデン公衆衛生局首席疫学官Anders Tegnell氏の提言を主体とした、国家と国民との信頼性を問われる危険な賭けとも言われてますね。
4月9日現在、全世界の感染者1,519,531人 回復者330,986人 死亡者88,549人

 有名なスウェーデン人としては、映画監督のイングマール・ベルイマン、女優ではイングリッド・バーグマン/グレタ・ガルボ/レベッカ・ファーガソンなど、ミュージシャンではロクセット/ヨーロッパ/イングヴェイ・マルムスティーン/アヴィーチー/フジコ・ヘミングなど、その他環境活動家グレタ・トゥンベリなど、他の北欧諸国より耳馴染みある人がけっこういます。

 スウェーデンの特徴とされるものをいくつかあげてみます。
◎国民の国家への信頼が厚いといわれている
◎地方行政は、国の出先機関であるレーンという自治体と県民選出のランスティングという自治体が同じ区割りで同時に存在し、役割がはっきり別けられている
◎男女平等やフェミニズムについての考え方が進んでいる
◎6・3・3の義務教育で日本とも学校教育システムは似ているが、リカレント教育という生涯学習が広く普及
◎再婚カップルの連れ子はボーナス子供 (bonusbarn)、 子どもにとって新しい親はボーナス両親(bonusföräldrar)、連れ子同士の関係はプラスティック兄弟 (plastsyskon)等の血縁関係にない家族の呼び方がある
◎4ヶ月を超える待機児童がゼロ
◎キャッシュレスが世界最高レベルでATMが続々と撤去されており、若者の大半は現金を持ったことがない
◎パーソナルスペースが広く新参者の受け入れに時間がかかる
◎フィーカという独特のコミュニケーション方法が日常的
◎中小の医療施設がとにかく少なく予約待ちがとにかく長い
◎緻密な計画立案が不得手で臨機応変な対応に直面すること多々
◎和や団結を大事にし突飛な行動やオーバーリアクションが嫌われるが個人の自主性や自立心が非常に高い、など。

 ちなみにこの映画の主なロケ地はスウェーデン最北端に位置するノールランド地方のノールボッテン県、オーストリアのインスブルック(※ルーレオLuleå市で撮影されたとのネット記事もあるけれどクレジットはされておらず、Googleマップ先生でも劇中場面と一致する場所は無かった)。

 色々調べながら思ったのは、国としても個人としても、複雑な歴史や厳しい自然環境のもとに内向きでありながら前向きな気質が独自の建前と本音を生み、今より良くなると判断したことは即座に実行するお国柄といった印象をうけました。勿論そういった諸々が映画にも反映されているのではないかと。
本作を私の乱暴な言葉で表すと、主人公が他のメンバーを調律しながら自身の閉ざされた引き出しも開放する音叉的な映画だと思います。繰り返し観ているうちにこちらも調律されてる気分になりました。

 今回、Filmarksに挙がっているスウェーデンが制作に関係する587作品中、Markされてるものを全部開封して、私がフォローさせて頂いてる方のレビューを総て読ませてもらって参考にしました。
Qちゃん様、天様、もっちゃん様、al様、ほか皆様の素晴らしいレビューの数々にあらためて脱帽した次第。日頃のお付き合いを含め、厚くお礼申し上げたい。これからも勉強させてもらいます(´ー`)ノ