アルモドバルのねじれた時代への愛惜が伝わってくる作品。
一歩間違ったら小難しい芸術映画やつまらない感動作なってしまいそうなところをギリギリのところで踏みとどまってノワール的な話法でまとめた秀作。
欲と打算はしっかり保持しながらも、過去の想いはそのままにひきずっている主人公の屈折ぶりが面白い。
誰しもがひっかかってしまうであろう少年時代の出来事の一見美化されたような描写は、ファシスト政権下にあった、性的虐待なんて言葉も恐らく存在していなかったある種モラルがねじれた状態にあった時代への監督の愛憎相半ばする想いの反映なのだろうと思いました。
この時代、ローマカトリック教会自体のモラルはむしろ今よりリベラルが主流だったのですよ。少年同士の恋愛も性的虐待も同じレベルで扱われてしまったのはむべなるかな、であります。
(日本初公開時劇場鑑賞)