RyukiW

ヴェラ・ドレイクのRyukiWのレビュー・感想・評価

ヴェラ・ドレイク(2004年製作の映画)
3.7
【優しさによる功罪/善悪では語れない真実】


戦後のイギリスの労働者階級をの過程を中心に描いた映画です
この時代のイギリスが舞台の映画は何本も見てきましたがとにかく陰鬱で暗いです。そこに一筋の兆しがあったり希望を見出す映画が多い中この映画はひたすら悲しくなっていく映画です

もちろん家族のやり取りなどハリウッド映画にはないこじんまりとした暖かさは序盤を中心に終始流れておりその心地よさはイギリス映画の魅力です

しかし、ヴェラの行ってきたことを善か悪かでは裁けないし、どう評価すればよいのかもかなり難しいです。正直なところ。

法的にはアウトだけれども、倫理的に見て仕方ない、必要悪というものもあればその逆もある。そんな世の中です。
ヴェラは本当に心優しく見れば見るほど彼女を応援したくなります。
そして実際に彼女は多くの悩める女性を救った来たわけです。それは事実です。

そんな中、段々とその行為が当たり前になってきて躊躇がなくなっていく、麻痺していく様子も伺えます

やはり正当なやり方でないため正義のような行為であっても問題は問題なのです。その意識の薄れが悲しい結末を生んでしまったかと思います

彼女が心優しい人間であったからこそ幸せなエンドを期待したのですが現実は厳しいですね

刑務所で心細く歩くヴェラを見ていると2年もやっていけるようには見えませんでしたが、それを静かに時が過ぎ、母が帰るのを待つ家族のエンディングシーンがなんとも言えない余韻を残してくれました。

彼女は裁かれなくてはならないけれども、彼女が人々に残した善意や優しさは色褪せることなく、周囲の人々は彼女を見捨てることなく、信じ続けるのです。


2019.6/8
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