こたつむり

アウトレイジ ビヨンドのこたつむりのレビュー・感想・評価

アウトレイジ ビヨンド(2012年製作の映画)
3.8
♪ まるで論外だね 人の娯楽のため
  何も残らないね 台無しで終わるさ

『アウトレイジ』の直接的続編。
登場人物や世界観を引き継いでいるので、前作鑑賞が必須の作品でした。

ただ、笑えるポイントは減っていましたね(当社比)。前作はコメディと言いたくなるほどに“皮肉的な視点”が目立っていましたが、本作は基本的にストレート。まるでヤンキー漫画のようでした。

違いは意思疎通の方法だけ。
ヤンキーの世界は“ふたつの拳”が大切ですが、ヤクザの世界で重要なのはピストル。「あ?」とか「バカヤロウ」とかの“鳴き声”とともに感情が発露するのです。

だから、命も簡単に散るわけで。
この辺りの“やりたい放題”感は前作よりもパワーアップしていました。著名な役者さんだって容赦なく退場していきますからね。

でも、ストレートなのは暴力行使の瞬間のみ。
劇中の人間模様は前作よりも複雑怪奇に入り乱れています。だから、飽きないんですよね。これは海千山千の芸能界を潜り抜けた北野武監督ならではの人間描写だと思います。

また、表現の下地が暴力ですが、本質的にはヤクザが嫌いなのでしょう。あまり極道映画に詳しくないので間違っているかもしれませんが、他の作品に存在する“憧憬”が無いんですよね。とてもサバサバとした感覚なのです。

ちなみに本作の狂言回しは小日向文世さん。
この方が脇にいると物語に安心感が生まれますよね。とても貴重な役者さんですが、ビートたけしさんを差し置いて真ん中にいると…とても違和感が満載で少しだけ笑えます。

また、中野英雄さんが演じた昔気質のヤクザも良かったですね。この御方も脇をギュッと締めてくれる名優。個人的には《チョロ》の印象が強いのが難点ですが…(それだけ確固たる存在感がある…ということです)。

まあ、そんなわけで。
過剰な暴力表現だけがエスカレートした物語。
それを笑い飛ばすのは、かなり豪気な胆力が必要だと思いますので、静かに臨むことをオススメします。個人的には前作よりも面白かったですよ。
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