しまうま

ラスト・ターゲットのしまうまのレビュー・感想・評価

ラスト・ターゲット(2010年製作の映画)
4.0
 田舎町に身を隠すことになった狙撃手は友人をつくらないよう、距離をとって生活しようとしていた。それでも町の人々は温かく彼を迎え、接してくれる。
 ジョージ・クルーニー主演。
 イタリアの田舎町で起きる狙撃手の静かな隠遁生活を描いた作品。


 まず、主演のジョージ・クルーニーが素晴らしい。
 微妙な表情の変化、序盤と中盤、そして最後まで至るにつれ、彼の心がどこか変わりつつあり、または変わらないものを持ち続けているというような微妙な兆しを見事に表現してくれている。肉体美もさることながら、彼の良さをろ過して最後の一滴まで絞り尽くしたような一幕がそこにはあった。

 当初はタイトルと主演俳優から勝手にわりとガンアクション派手めな作品かと思ったけど、予想以上に淡々と刻まれる日常の風景がそこにはあった。こういうテイスト、言葉をあえて悪くチョイスすると「小洒落た」「文学的な」映画は、僕は本来苦手なはずなんだけど、音楽とカットの切り方、演出の素晴らしさのおかげで、最後まで飽きることなく、その日常を追いかけることができた。

 神父の細かな立ち振る舞いにも好感がもてた。
 ああいう存在が、主人公の心に何かしら変化を与える手助けになったのかもしれないという想像の余地も残してくれる魅せ方は嫌いじゃない。
 何より、ごく個人的な話にはなるけど、僕も身体の関係からスタートしていつしかそれだけじゃない関係になってしまった経験をもつ身として、ジョージ・クルーニーの目の色の変化に、共感してしまう自分がいたことは否定できない。


 敢えて苦言を呈すならば、もうひとりコミカルなタイプの人間、そして肉体的にふっくらとした人間がいてほしかった。登場人物みんな、あまりにも細身で「映画的」なおかげで、そこに関してはすこし作り物めいた興醒め感をもってしまった。

 こういう映画も悪くない。そう思った。
しまうま

しまうま