しまうま

フォーリング・ダウンのしまうまのレビュー・感想・評価

フォーリング・ダウン(1993年製作の映画)
3.9
面白かった。

ごく普通の男がふとした事をきっかけに狂気に走り暴走するという内容だけど、物語が進んでゆくにつれて男が元々内に狂気を抱えていたことが明らかになっていく。

社会や制度に不満を持つのはごく当たり前のことであるのは確かだ。男もそうしたイライラを抱えている「常識人」だと自分では思ってしまっているところに何とも言えない怖さがあった。


それが最も浮き彫りになったように思えたのは、街中で銃を乱射したり人を殺したりする場面じゃなく、ある回想シーンだった。
家族をお出かけ先に連れて行く「理想の父親」という自分に酔った男は、出先の馬の模型に娘を乗せようとする。娘は怖いから乗りたくない。男はだんだんとイライラしながら「馬に乗れば娘は必ず喜ぶ」と自分が信じる世界を疑わずに無理やり娘を抱え上げて乗せようとする。母親は嫌がる娘の味方をしてそれを遮る。彼女は娘の嫌がることを平気でやろうとする旦那に唖然となる。
俯瞰して見ればその姿は「娘を喜ばせることができる父親」に自分がなるためにやっていることでしかないのに、男はそれに気づいていない。

その強烈な身勝手さに、人がもつ怖さを感じた。良い映画だった。
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