しまうま

暗数殺人のしまうまのレビュー・感想・評価

暗数殺人(2018年製作の映画)
4.5
最高だった。



ベテラン刑事とサイコパスな殺人犯の対決が物語の基本軸となるんたけど、最後の最後にその基本軸そのものがひっくり返るという構図。
そのひっくり返り方が「大どんでん返し」とかそういうことじゃなく、静かに、それでいて鮮烈に、犯人と僕ら視聴者に叩きつけていくという痛快さ。最高だった。


この手の映画で主人公のベテラン刑事がイケメンでもなんでもなく、本当にごく普通の中年男性というのもまた最高だった。
逆に犯人役のチェ・ジフンはイケメンで、2人のビジュアル的な対比もすごく良い味を出していた。ベテラン刑事役はキム・ユンソク。この2人の素晴らしい演技にも拍手したい。最高だった。



称賛の言葉を何度も使うことで自分の言葉が安っぽくなるのもどうでもいいと思うくらい、最高だった。





▪️▪️簡単なあらすじ▪️▪️
麻薬捜査官のキム・ヒョンミンは、雇っている情報屋からカン・テオと名乗る男を紹介される。テオは死体を運んだ情報を提供する代わりに金を要求してきた。キムの趣味がゴルフと知って、そこそこのお金を巻き上げられると踏んだのだ。
その時、別の刑事らが踏み込んでテオをその場で拘束した。テオの容疑は「恋人殺し」。キムがテオの情報を買うこともなくなったかと思われた。

後日、ゴルフを楽しんでいるキムの携帯電話が鳴った。テオからだった。
「本当は7人殺した」
キムはテオの面会に赴く覚悟を固めるのだった。




▪️▪️ネタバレありの感想▪️▪️
今さらここに書くべきことはあまりない気がする。

それでも最後のキムの言葉が心に重くずっしりと響いたことだけは書いておきたい。
「お前は絶対俺には勝てない」というテオに「お前に勝って何になる」という返答。

キムは最初からテオと勝負なんかしていなかった。ただただ殺された人とその遺族の無念を考えて行動していただけだった。

殺人はゲームじゃないし、シリアルキラーとの討論で勝つかどうかなんて全くの無意味だ。キムの言葉は、それこそ今作のような映画を「楽しんでしまっている」僕らの心までも強烈に揺さぶってくる。



さすがにキムがテオから情報を買うのに私財を投げ打つのには違和感というか、それはそれで警察システムの構造に問題があるとは思う。
序盤以降、ゴルフの場面は一切出てこないことからキムは相当の金をテオに与えて情報を引き出したのだろう。そこまでひとりの刑事に治安維持の責任を負わせることなんて出来るはずがない。
それでも、キムのような刑事がいてくれることをどこかで望んでしまっている自分がいる。


キムが未だに殺されたとされる行方不明者の遺体をひとりで探し続ける映像で今作は終わる。観てよかった。
しまうま

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