カッチェ

キャスト・アウェイのカッチェのレビュー・感想・評価

キャスト・アウェイ(2000年製作の映画)
4.0
感想①「最強タッグ再び」
ロバート・ゼメキス監督&トム・ハンクス主演作品。第67回アカデミー賞で作品賞・監督賞・主演男優賞を含めた6部門に輝いた「フォレスト・ガンプ/一期一会」以来、両者2度目のタッグ。
「キャスト・アウェイ」でも、第73回アカデミー賞の主演男優賞にトム・ハンクスはノミネートされましたが、残念ながら受賞には至りませんでした。しかし役作りの為に22.7kgも減量し、無人島シーンのほとんどを彼一人だけで演じ抜いたその役者魂は圧倒的でした。

感想②「主人公のキャラ設定が完璧」
チャック・ノーランド(トム・ハンクス)は、運送会社フェデックスの管理職をし世界を股にかけて仕事をしている。この運送会社フェデックスは、架空ではなく実在の会社であり世界最大手の運送会社。冒頭シーンはなぜか荷物目線のカメラワークで始まり、フェデックスのPR映像かと思いました(笑)しかしこの後チャックが登場すると、彼は最初のシーンから説教中。ブラック企業かよと思われるような長々とした演説に、なぜか日本のブラック企業として有名な各運送会社を思い出す(笑)フェデックスもよくこの映画に使用許可出しましたね。

「我々はみんな時間に支配されている。生き残るも死ぬのも時間次第。常に今何時か考えろ。そして時間に遅れるという罪を絶対に犯すな」
チャックの言動や行動は完璧な仕事人間であり、常に時間に支配され1秒でも無駄に出来ないという人生。そんな彼が飛行機事故(自社の荷物運搬用飛行機)で無人島にたった一人で漂着し、いつ終わるかも分からない長い長い時間を与えられるのが、皮肉だけど設定としては完璧。

感想③「仕事人間は恋愛も大変」
彼女への電話も慌ただしい。メンフィスにいる婚約者:ケリーと一緒にクリスマスを過ごす為にロシアから帰ってきたチャックは、彼女の親戚一同と食事をしている時でも社員の前で演説した時のようにトークは絶好調。「いつになったら結婚するんだ?」という質問にも、「そう絶対聞かれると思ってケリーと賭けをしてたんだけど僕の勝ち!彼女はまだ前のことから立ち直ってないんだよ」とケリーの前夫との離婚話まで持ち出してトークを弾ませる。ちょっと無神経。
しかも楽しく過ごせると思っていたのに急な仕事が入り、クリスマスのプレゼント交換も車の中でする羽目に。ケリーからは彼女の祖父が使っていた懐中時計(彼女の写真入り)を貰い、チャックからは手帳とポケベルとハンドタオルをプレゼント。彼女がほしかったのはどう考えても指輪。おいおいどこまで無神経なんだと思ったら、ここで心憎い演出。チャック、仕事人間だけど意外とロマンチストだったのね。でも、この後に彼と彼女の運命が大きく狂うかと思うと辛い。

感想④「愛すべきウィルソン」
無人島での生活が始まるが、サバイバルシーンは本格的。救助が来ないかもしれないという恐怖、空腹との戦い、治療できてなかった虫歯の痛み、火をつけるだけでも何日も費やし一苦労。そしてなによりチャックが精神的に追い詰められたのは、孤独な環境。サバイバル生活に心折れそうになった彼は、今まで運送業のプライドとして手を付けてなかった島に流れ着いた荷物を開封する。その中に、ウィルソン(メーカー名)とのちに名付けられるバレーボールがあった。
血でバレーボールに顔を書き、ウィルソンと名付けるチャック。このウィルソンとのシーン、最初はコントかよって思わず笑ってしまうが、ずっと観ている内に愛すべき存在となり癒される。懐中時計のケリーの写真を観ても明日への希望も見いだせなかったのに、ウィルソンが登場してから一気に元気になるチャックが可愛い。ウィルソンのとあるシーンは初鑑賞時から涙が止まらなかったが、二回目以降の鑑賞ではウィルソンが登場した瞬間から泣きそうになってしまう(笑)

感想⑤「30分あるその後のシーンが重要」
こういうサバイバル映画だと脱出するまでの困難を描いて、主人公が助かったところで感動的に終わるものが多いと思います。ただこの作品はその後のこともたっぷり時間を使って描き、むしろその部分こそがこの映画が一番描きたかったところかもしれません。そう思わせてくれるロバート・ゼメキス監督の手腕の凄さ。
また、冒頭にあった配達シーンも、無人島で荷物を開封していた何気ないシーンにも伏線あり。冒頭シーンが、ラストシーンへと繋がります。最初から最後までしっかりと一つの作品として繋がっているものは、何度見返しても面白いですね。
カッチェ

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