カッチェ

ロンドンゾンビ紀行のカッチェのレビュー・感想・評価

ロンドンゾンビ紀行(2012年製作の映画)
3.7
感想①「B級映画らしいスピード感」
ロンドンの下町に暮らす兄テリー(ラスムス・ハーディカー)と弟アンディ(ハリー・トレッダウェイ)は、ちょっとお馬鹿なチンピラ兄弟。祖父のレイ(アラン・フォード)が入居する老人ホーム「ボウ・ベル」へ食品を届けることで生計を立てている。しかし不況のあおりを受け、ボウ・ベルが閉鎖されると聞いた兄弟は、祖父と入居者達を救うために銀行強盗を計画。従兄弟や幼馴染を誘い運良く金を強奪することに成功したが、なぜかゾンビが大量発生していてロンドンが大パニックに。人質を取り警察とゾンビから逃げる彼らだが、その頃ボウ・ベルにも大量のゾンビが押し寄せており、レイや他の入居者達が壮絶なサバイバルを繰り広げようとしていた。

冒頭、古代遺跡が建設現場で発見されるというホラー映画では王道パターンからスタート。でもB級映画なので、基本お馬鹿。封印するって書いてあるのに、速攻で遺跡を壊し中に入る作業員二人。遺跡の中は集団墓地なのか亡骸だらけ。なんだこれと言い合う二人の背後にさっそくバタリアンみたいなゾンビ登場。開始3分でもう被害が拡大するというB級らしいスピード感。

感想②「BGMが良い仕事」
オープニングもエンドロールも基本ノリノリ音楽です。オープニングは登場人物がアメコミ風のイラストで登場するので、B級映画なのにお洒落で格好良く感じました。この映画、どのBGMもおいおい!っと思わずツッコミ入れたくなるような絶妙なセンス。BGMの選曲が場違いすぎて(笑)

感想③「回想シーンのおかげで短時間で登場人物を理解できる」
テリー&アンディ兄弟が登場し車の中で会話してる合間に、回想シーンがパッと入るのが面白い。例えばトラブルがあると「兄がいるんだからな!」と、すぐに兄を巻き込もうとする弟のシーンが入るので、ああアンディは兄に何もかも頼るタイプでお馬鹿なんだなっと分かります。

老人ホームで祖父であるレイが登場すると、さっそく二人を説教し「俺は15歳の時に鯖読んで入隊してナチと戦った」という台詞と共に回想シーン。これだけでレイがやり手で、この映画で活躍するんだろうなと期待感がでます。またレイがさらっと兄弟の両親が亡くなったことを言うので、テリー達にとってレイは親代わりでもあることが分かります。こういう風にかなり分かりやすく、尚且つテンポ良く人間関係を教えてくれるのでストレスなく見れます。ちなみに両親がなぜ亡くなったのかも、ちゃんと回想シーンがあります。個人的には一番好きな回想シーンです(笑)

感想④「理解力も展開もはやい」
孫達が銀行強盗してるシーンと、老人ホームで陽気な演奏会をしているシーンのギャップが面白い。そしてこの映画の登場人物は、理解力があります。ゾンビを見てすぐに「ゾンビね」と認識したり、ゾンビをどう倒せばいいのか悩んでも「頭を打つのよ、常識よ」とすぐ教えてくれたりスムーズ。全然走らないゾンビに対して「わりとノロいんだな」という発言には「当たり前だろ疾走するかよ死者だぞ」と他のゾンビ映画を皮肉ったり(笑)

若者はどんどんゾンビ化して死んでいくけど、老人は元気に生き残るそんな世界。乳母車でやってきたゾンビ親子に対しても同情なんてない。赤ちゃんだってゾンビになったらドーンと遠くへ蹴られちゃう。パニック映画やホラー映画は老人には厳しいのに、この映画の老人達は大活躍。

感想⑤「老人が輝く映画」
老人ホームがゾンビで襲われてても、日課の昼寝を庭でしているハミッシュじいさん。ゾンビが後ろにいると叫んでも、起きたばかりのハミッシュには中々伝わらない。でもこの映画の登場人物は理解が早い。やっと振り返って即「ゾンビだ」って逃げ出すハミッシュ。小鳥のさえずりをBGMに、歩行器をガチャガチャやりながら全速力。しかし赤ちゃんのハイハイより遅い。ついでにゾンビも遅い。超絶遅い追い掛けっこに謎の緊迫感。

ゾンビになってしまった老人仲間に「まだあの人83歳だったのに…」とか言っちゃうギャグセン高いこの映画。面白いだけじゃなくて格好良いシーンもたくさん。特に兄弟の祖父であるレイと、恋仲であるペギー(オナー・ブラックマン)が素敵。オナー・ブラックマンと言えば、歴代ボンド・ガールの中でも人気が高い『007 ゴールドフィンガー』のプッシー・ガロア役で有名。二人の会話も洒落がきいてて素敵なんですけど、銃をぶっ放すその姿が格好良い。しびれます。

感想⑥「女の子達も魅力的」
テリー&アンディの兄弟の絆と、レイ&ペギーの最強カップルも魅力的ですが、テリー達のいとこであり強盗仲間でもあるケイティ(ミシェル・ライアン)も頼もしくて素敵でした。鍵開けが得意な彼女はテリー達とは違いしっかりしていて、銃の取り扱いも完璧。先陣切るその姿は女性なのに誰よりもイケメン。

そしてもう1人は銀行強盗中に人質となってしまったエマ(ジョージア・キング)。最初はテリー達に不信感しかなかった彼女も、病弱な妹が無事なのか確認する為にも彼らと協力してゾンビと戦うべきだと決意。でも普通の女の子な彼女はなにをするにもちょっと鈍臭く、皆が一斉に銃をぶっ放すシーンでも一人だけ反動でよろめいてたり演技も細かくて良かったです。最後まで可愛いヒロインですよ。
カッチェ

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